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第5部 第15話 狂王の城、あるいは至高の別邸

「……汚ねえ。一箇所でも臭いが残ってたら、お前ら全員、魔物の餌だからな」

洗浄魔法を使いすぎて魔力切れで倒れかけている部下たちを尻目に、ルーニーは翡翠城の廊下を執拗にチェックしていた。

大谷吉継譲りの完璧主義が、今や「元婚約者たちのQOL死守」という一点にのみ注がれている。

「よし、連れてこい」

鉄仮面のような無表情を作り、ルーニーは城のテラスに鎮座した。

やがて、目隠しをされ、鎖(※ルーニーの指示で内側に柔らかい布が巻かれている特注品)で繋がれたアイリス、エヴァ、テイラーが運ばれてくる。

「……目隠しを外せ」

視界が開けた瞬間、三人は息を呑んだ。

そこは、悪臭漂う地下房ではなく、白磁のタイルが光り輝き、心地よい風が吹き抜ける、地上で最も美しいと言われる翡翠城の最上階だった。

「な……ここ、は……?」

アイリスが呆然と呟く。

「フン、貴様らのようなゴミにはお似合いの地獄だ。ここが今日から貴様らの監獄――『翡翠の牢獄』だ」

ルーニーは不敵に笑い、14歳の長身を翻して言い放つ。

「監獄だと言いましたわよね……? なぜ、ベッドが王国の王宮よりフカフカなのですか? なぜ、テラスに私好みの最高級の紅茶が用意されているのですか?」

テイラーの冷徹な声が飛ぶ。彼女の目は誤魔化せない。

元情報局長として、彼女はこの城の「異常なまでの清潔さ」と「不自然なまでの自分たちの好みの把握」を見抜いていた。

「……それは、貴様らを油断させ、精神的に骨抜きにするための拷問だ! キャッハ! 贅沢に慣れさせた後で、一気に奈落へ突き落としてやるためのな!」

「あら……! そういうことでしたのね! あえて豪華な生活をさせ、私の肌を最高のコンディションに整えてから……夜、じっくりと、その『野生の瞳』で私を……あああ、なんて破廉恥な拷問なのかしら……!!」

エヴァが顔を真っ赤にして、ありもしない「拷問」の妄想に身を震わせる。

(やべえ、こいつらの分析能力と妄想力が想定外すぎる……!)

冷汗を流すルーニー。だが、彼はさらに追い討ちをかけるように命じる。

「ゴルザ! こいつらに『毒』を食わせろ。……最高級の、一口食えば動けなくなるほどの美味な『毒(※最高級フルコース)』をな!」

「……坊ちゃん、もう隠す気ねえだろ」

ゴルザのツッコミは、狂王の笑い声にかき消された。

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