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第5部 第14話 狂王の汚物作戦――翡翠城、陥落(?)

「……いいか。翡翠城を落とす。だが、火も剣も使うな。……空から、ありったけの『汚物』を撒き散らせ」

ルーニーの指令に、ゴルザをはじめとする部下たちは耳を疑った。

「は……? 坊ちゃん、今なんと……?」

「聞こえなかったか? うんことおしっこだ。それを空を飛ぶ魔物たちに持たせ、翡翠城の庭園、回廊、バルコニー、そしてゼノンが愛でている薔薇の生垣に至るまで、容赦なくブチまけろ!」

(ああ、めんどくさい! まともに攻めたら家具が壊れるし、絨毯に返り血が飛ぶ。潔癖症のゼノンなら、城が『汚物まみれ』になれば、戦うプライドよりも先に理性が崩壊するはずだ!)

大谷吉継の冷徹な分析と、なりふり構わぬ野生の直感。

数時間後、翡翠城の空を覆ったのは死の影ではなく、凄まじい異臭を放つ「爆撃」だった。

「な、なんだこれは!? 私の、私の美しい城がぁぁぁ!!」

城主、美風卿ゼノンの絶叫が響き渡る。

磨き上げられた白壁にこびりつく茶色の斑点。香水の香りをかき消す圧倒的な悪臭。

潔癖症の彼は、戦うどころか城内に留まることすらできず、顔を真っ青にして「こんな不潔な場所、もう耐えられん!」と吐き捨て、身の回りの品だけを持って早々に逃げ出した。

残されたのは、主人に見捨てられ、泣きながら雑巾とバケツを持って清掃にあたっていた魔族の部下たち。

そこへ、万全の態勢を整え、鼻をつまんだルーニー率いる軍勢が突入した。

「……掃除ご苦労。あとは俺たちがやる」

清掃中だった魔族たちは、抵抗する気力もなく降伏。

こうして、魔族領でも一、二を争う美城・翡翠城は、一滴の血も流されることなく(別の液体は流れたが)、わずか半日で陥落したのである。

「よし、ゴルザ。すぐに魔導士たちを集めて『洗浄魔法』を全力で回せ。一時間以内に新築の匂いに戻せ。アイリスたちを連れてくるまでに、傷一つ残すなよ!」

「……坊ちゃん。あんた、ある意味、魔王より恐ろしいですよ……」

ゴルザの呟きを無視し、ルーニーは内心でガッツポーズを決めていた。

(よし! これでアイリスたちのQOLは確保できる! ついでにゼノンを追い出して勢力圏も広がったし、一石二鳥だ! ……あ、でもアイリスたちに『どうやって落としたの?』って聞かれたら、なんて答えよう……。キャッハ、とか笑って誤魔化すしかないか……)

14歳の狂王の覇道は、今、かつてないほど「臭い」勝利と共に刻まれた。

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