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第5部 第11話  狂王の物件探し――乙女たちのための攻城戦

「……汚い。汚すぎるだろうが、ここは!」

地下房(という名の、ルーニーが必死に埃を払った部屋)を後にした瞬間、ルーニーはゴルザの胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄った。

(なんだあの隙間風は! アイリスの肌が荒れたらどうするんだ! エヴァだってあんな硬いベッドじゃ腰を痛めるし、テイラーに至ってはネズミが出ただけで気絶しかけてたじゃないか!)

「は、はあ……? 坊ちゃん、ここは最前線の砦ですよ? むしろこれでも綺麗な方で……」

「黙れ! 早急に『清潔で、風通しが良く、日当たりが抜群で、風呂が完備された城』が必要だ。……おいゴルザ、近隣で条件に合う物件(城)を挙げろ」

ゴルザは呆然とした。先ほどまで「人間としての心を壊してやる」と冷酷に言い放っていた主人が、今は血眼になって「女子向けの優良物件」を探しているのだ。

「ええと……この先に魔族の幹部、『美風卿びふうきょうゼノン』が治める翡翠城ひすいじょうがあります。あいつは潔癖症で、城内は常に磨き上げられ、庭園には季節の花が咲き乱れているそうで……」

「よし、そこだ。そこを獲る」

「……へ? いや、あそこは要塞としても一級品で、まともに攻めたら数ヶ月は――」

「うるさい! 城壁を壊したら修繕に時間がかかるだろうが! 庭の花が散ったらアイリスたちが悲しむだろうが! 傷一つ付けずに、今すぐゼノンを追い出して城を明け渡させろ!」

(ああ、めんどくさい! めんどくさいことになったぞ! なんで俺が、魔族を倒す理由が『アイリスたちのQOL(生活の質)向上のため』なんだよ!)

ルーニーは内心で絶叫しながらも、頭脳はフル回転していた。

大谷吉継の緻密な計算と、真田昌幸の「城を壊さず乗っ取る」狡猾な知略が、「最高のリフォーム済み物件」を手に入れるために発動する。

「ゴルザ、バアルに連絡だ。ゼノンの城の供給路を断たせろ。ただし、城内の備蓄品――特に高級な寝具や化粧品は絶対に壊すなと念を押せ。……一兵も殺さず、ゼノンが『ここは居心地が悪くてやってられん』と言って逃げ出すように仕向けるぞ」

「キャ、キャッハ……(えぇ……)」

さすがのゴルザも、主人の狂気の方向に引き気味だった。

だが、ルーニーの本気は止まらない。

今夜の夕食も、わざわざ「魔族から奪った凶悪な肉だ」と言い張りながら、実は栄養価抜群の高級部位を、アイリスたちにそれと悟られぬよう提供する準備を始めていた。

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