表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/116

第5部 第8話 支配者の帰還――絶望を教える「逆さ家紋」

ハクザン公国の特使たちが『白骨の牙城』へ辿り着いた時、彼らを迎えたのは「支配の格」の違いだった。

かつて公国において、王女たちを最強の駒へと教育し、国の中枢すらその手中で自由に転がしていた神童ルーニー。大谷吉継の魂を持つ彼は、あの日、公国が自分にさらなる制裁を加えようと画策した際、彼らに「裁く隙」すら与えず、自ら嘲笑と共に魔族領へと消えた。

「…………」

玉座に座る14歳のルーニー・ハクザン。

3年の野生生活と1年の建国を経て、その肉体は猛々しく成長し、瞳には魔物を喰らい尽くしてきた「野生の光」が宿っている。

「ル、ルーニー様……。公爵閣下は、貴方様を呼び戻し、かつての地位を……」

特使が震えながら言葉を紡ぐ。ルーニーは、暗闇で鈍く光る瞳で彼らを射抜いた。

「地位、だと? 勘違いするな。俺はあの日、お前たちを支配することに飽きたから捨てたんだ。……追加の制裁などというくだらない企みで、この俺を縛れると思ったか?」

ルーニーの低く冷徹な声が、砦の石壁を震わせる。

かつて公国を自由に支配していた彼にとって、公国側の浅ましい策謀など、退屈極まりない「遊び」に過ぎなかった。

「キャッハ……! 公国を捨てて4年。魔族を殺し、地形を奪い、地図を塗り替えるのは実に愉快だったぞ。……今や、俺を殺し損ねたお前たちが、震えながら俺の顔色を伺っている」

ルーニーが指を鳴らす。

瞬間、真田流の軍略で鍛え上げられた隷属兵たちが、音もなく特使たちの喉元を制圧した。

「いいか。帰って伝えろ。俺は公国を『取り戻す』つもりなどない。俺が望むのは、俺が捨てたゴミ箱(公国)が、この逆さ家紋の旗の下で、どれほど醜く燃えるかを見ることだけだ」

ルーニーは、かつての教育者らしい端正な顔に狂気の笑みを浮かべ、宣告した。

「一ヶ月以内に、俺を退屈させないほどの『謝罪の品』を持ってこい。……公国の財、食糧、そしてお前たちのプライドすべてだ。さもなければ、この一万の魔兵を率いて、俺がかつて支配していた庭を、今度は更地にしてやる」

14歳の狂える軍神の威圧感に、特使たちは腰を抜かし、泥を這うように砦を逃げ出した。

それは、かつて自ら世界を投げ捨てた王が、今度はその世界を「蹂躙」するために動き出す、侵攻の狼煙だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ