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第5部 第3話 魔境の一夜城――軍神の築城術

魔族領の要衝、切り立った断崖にそびえる「むくろの断壁」。

そこは、凶暴なオーガの部族が支配する、力こそが全ての天然の要塞だった。

「坊ちゃん、あそこを落とすんですか? 正攻法じゃ、うちの兵力が半分は溶けますぜ」

ゴルザが呆れたように鼻を鳴らす。

「正攻法などしない。……ゴルザ、集めた手下に命じろ。今夜中に『木材』と『偽装板』を指定の位置へ運び込ませろ。音を立てるなよ」

ルーニーが命じたのは、戦闘ではなく、異常な速度での「建築作業」だった。

あらかじめ別の場所で組み立てた壁ややぐらのパーツを、夜闇に乗じて砦の目と鼻の先に運び込み、一気に組み上げる――かつての日ノ本で軍略家が用いた「一夜城」の再現だ。

翌朝。

砦のオーガたちが目を覚ますと、そこには昨日まで影も形もなかった『白骨の牙城はっこのがじょう』が、自分たちの城を見下ろすように完成していた。

「な……なんだ、あの建物は!? いつからそこに……っ!」

魔族たちはパニックに陥った。彼らにとって、城とは年月をかけて築くもの。それが一夜にして出現するなど、強大な上位魔法か、あるいは神の仕業にしか思えない。

「……混乱しているな。今だ、火を放て。ただし城ではなく、奴らの『食糧庫』と『退路』だけだ」

ルーニーの冷徹な指示。

一夜城から降り注ぐ火矢と、正体不明の軍勢への恐怖。「全方位を包囲された」という錯覚に陥ったオーガたちは、自慢の怪力を使う機会すら与えられないまま、同士討ちを始め、挙句の果てには砦を捨てて逃げ出した。

「キャッハ! 面白いように逃げていくな。戦わずして勝つ……これが『軍略』だ」

ルーニーは悠々と、空になった砦の玉座へと歩み寄った。

3年間、泥を啜りながらこの地を彷徨った少年の面影はない。

「ゴルザ。ここを今日から『新生ハクザン』の拠点とする。……魔族どもに教えてやれ。これからこの地を統べるのは、力だけの野蛮人ではなく、智略を持つ『王』だと」

魔族領の常識が、たった一晩で塗り替えられた。

ルーニー・ハクザンの「国取り」は、衝撃と共に幕を開けた。

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