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第4部 第19話  狂乱の宴――微笑む処刑人

「……殺せ! あの生意気なガキを殺せ!!」

教官の一人が叫んだのを合図に、広場にいた数百人の冒険者候補生、そして実力派の教官たちが一斉に武器を抜いた。

その中には、かつて前線で名を馳せたBランク、Aランク相当の熟練者も混じっている。数と質、その両方が10歳の少年に牙を剥いた。

だが、ルーニー・ハクザンは動じない。

それどころか、その口角は吊り上がり、喉の奥から奇妙な笑い声が漏れていた。

「キャッハ! いいね、最高だ。これだよ、この殺意こそが戦場だ!」

ルーニーが指先を軽く振る。

それだけで、真空の刃(魔力斬)が空間を裂いた。

「ぎゃああああああっ!?」

先陣を切った大男の右腕が、肘から先を失って宙を舞う。

返り血を浴びたルーニーは、その赤い雫を舌で舐め取り、さらに笑い声を弾ませた。

「キャッハッハ! 次はどっちだ? 足か? それとも指を一本ずつか?」

それは、もはや魔法ですらなかった。

軍神ラインハルトが積み上げた「効率的な肉体破壊」の技術。

ルーニーは踊るように戦場を駆け、向かってくる者たちの四肢を、まるで紙細工のように次々と切り飛ばしていく。

殺しはしない。

死ぬことさえ許されぬ激痛の中で、自分たちが「何に挑んだのか」を刻みつける。

「ひ、ひぃ……っ、化け物……化け物だ!!」

逃げようとした教官の膝裏を、正確な魔力の弾丸が貫く。

広場は一瞬にして、切断された手足と、絶望的な悲鳴が渦巻く阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。

「…………」

その光景を後方で見ていたアイリスは、震える手で自身の口を覆った。

「……ルーニー、なの? あれが……?」

あんなにも憧れ、魔力を注入された時に感じた愛しさ。それが今、目の前で笑いながら人を解体する「何か」への、純粋な恐怖に塗り替えられていく。

テイラーは冷徹に状況を分析しようとしたが、計算が追いつかない。

「……やりすぎです。これでは、公爵家どころか、王家との全面戦争になる……」

エヴァでさえ、その狂気の色に当てられ、腰を抜かして座り込んでいた。

彼女たちが求めていたのは「強い主君」であって、目の前にいる「無邪気に生体部品を散らす怪物」ではなかった。

「キャッハ! もうおしまいか? 案外脆いんだな、現世の人間ってのは!」

血の海の中、10歳の少年が一人、返り血を浴びて満月に吠えるように笑い続ける。

この日、ハクザン公爵家の三男坊による「冒険者実習」は、歴史に残る大虐殺事件として、国中を震撼させる大問題へと発展した。

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