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第4部 第17話  進化の代償――震える指先と確かな力

安宿の夜は、静寂とは無縁だった。

アイリスとエヴァは、ルーニーによる「強制拡張」の余波で、荒い息をつきながら床に伏していた。

「……はぁ、はぁっ……。ルーニー、私の体……中で、何かがずっと、暴れているみたい……」

アイリスが自身の胸元を押さえ、潤んだ瞳でルーニーを見上げる。

ルーニーの接吻によって注ぎ込まれた膨大な魔力。それは彼女たちの未熟な魔力回路を強引に引き裂き、新たな「器」を作り変えていた。

それは甘美な時間などではなく、文字通り「作り替えられる」苦痛を伴う作業だった。

「その『暴れているもの』を、力ずくでねじ伏せろ。……それができないなら、お前たちは一生、私の後ろで震えているだけの飾り物だ」

ルーニーの冷徹な言葉に、アイリスは唇を噛み、震える足で立ち上がった。

「……やれるわ。私は、王女よ。貴方に『価値なし』と捨てられるくらいなら……壊れた方がマシだもの」

隣では、エヴァが法悦の表情を浮かべながら、自身の指先から溢れ出す黒い霧(魔力)を凝視していた。

「あは……っ。主様の魔力が、私を内側から作り替えていく……。最高、です。……この力なら、ルーニー様を汚す全てを、消し去れる……っ」

翌朝。

彼女たちの顔からは幼さが消え、どこか影のある、研ぎ澄まされた表情へと変わっていた。

見た目は10歳の少女のままだが、纏う空気の密度が、昨日までとは根本的に異なっている。

「……行くぞ。実習の仕上げだ」

ルーニーは彼女たちの成長を確かめるように、最後に一度だけ、二人の喉元を指先でなぞった。それだけで二人の体内の魔力が共鳴し、戦いへの昂ぶりが最高潮に達する。

向かう先は、Aクラスのエリートたちが陣取る演習場。

「ハクザン公爵家の恥晒し」とルーニーを笑い、アイリスを「連れ去られた悲劇のヒロイン」として救い出そうと息巻いている、傲慢な騎士候補生たちの元へ。

「アイリス、エヴァ。……手加減はいらん。お前たちが手に入れた『化け物の力』、存分に味あわせてやれ」

「「――御意に、主様ルーニー」」

二人の返声は、重く、鋭く、広場へと響き渡った

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