第4部 第15話 安宿の序列(ランキング)――三つ巴の給仕
地竜の討伐を終え、一行が辿り着いたのは街道沿いの古い宿場町だった。
唯一空いていた「大部屋」に、ルーニーと三人の候補たちが詰め込まれる。
「……ふぅ。泥だらけじゃない。テイラー、お湯の準備は?」
アイリスが王女の癖で指示を出すが、ここは戦場。
「殿下、ここは学院ではありません。主様のお体を拭くのは、情報局長(私)の特権です」
テイラーが冷静に(しかし目は笑わずに)濡れタオルを準備する。
「……あ、あの……。私、魔物の返り血がついたルーニー様の服を……その、お洗濯……じゃなくて、じっくり『鑑賞』しながら洗いたいのですが……っ!」
エヴァが鼻息を荒くして、洗濯板を抱えて割り込んでくる。
狭い部屋で、ルーニーを巡る「世話焼きバトル」が勃発した。
「……黙れ。騒ぐなら、全員外で寝ろ」
ルーニーの一言で、室内は静まり返る。
「……アイリス。今日一番稼いだのはお前だ。だが、魔法の無駄遣いが多い。……テイラー。お前は効率を求めすぎて、エヴァのフォローを疎かにした。……エヴァ。お前は……戦え」
「「「……はい」」」
三人は並んで正座し、ルーニーの「査定」を神妙に聞く。
ルーニーは、今日稼いだ金貨の袋を三つの小袋に分けた。
「これは今日のお前たちの報酬だ。……ただし、これを使って『私のために、最も価値のあるもの』を明日までに用意しろ。……内容によって、明日の寝床の配置を決める」
「「「……!!」」」
それは、女たちのプライドを懸けた「買い物対決」の号令だった。
アイリスは最高級の酒か、あるいは……。
エヴァは怪しげな(妄想が捗る)道具か……。
テイラーは主君の健康を考えた実用的な品か……。
夜の帳が下りる中、三人は狭い布団の中で、互いを牽制しながら「明日の策」を練る。
ルーニーの隣という「特等席」を巡る、乙女たちの(少しズレた)戦いは、冒険よりも激しさを増していく。




