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第4部 第7話  序列の証明――選ばれし三人の椅子

学院の広大な訓練場。今日は、学年を跨いだ「魔法実技」の公開授業が行われていた。

全生徒が見守る中、演習場の中心に立ったのは、第一王女アイリスだった。

「ルーニー・ハクザン! 私と立ち会いなさい。王家の威信にかけて、貴方の無礼を正して見せるわ!」

アイリスが掲げた魔導杖から、激しい雷光が溢れる。

対するルーニーは、杖さえ持たず、退屈そうに欠伸を噛み殺しながら前に出た。

「……いいですよ。ただし、殿下。私に勝負を挑むなら、それ相応の『賭け金』を積んでいただかないと」

「賭け? 望むところよ! 私が勝てば、貴方は二度と王家に口を利けないようにしてあげるわ!」

「では、私が勝てば……。貴女を私の『許嫁いいなずけ』の一人として迎え入れる。それでどうでしょう?」

周囲が騒然となる。王女を許嫁に……それは、実質的に王家をハクザン家の軍門に降らせるという宣言に等しい。だが、ルーニーの言葉はそこで終わらなかった。

「ただし。私の隣に並ぶ椅子は、あと『二つ』用意してあります。つまり、貴女は三人の許嫁候補の中の一人に過ぎない……という条件ですが、受けていただけますか?」

「なっ……!? 私を、他の誰かと並べると言うの!? この、王家の血を引くアイリスを!」

アイリスの顔が、屈辱で真っ赤に染まる。

一国の王女を「三人の中の一人」として扱う。それはアイリスにとって、腕を斬られるよりも、死ぬことよりも耐え難い最大の侮辱だった。

しかし。

ルーニーは、彼女の瞳の奥に宿る「ある熱」を見逃さなかった。

アイリスは、幼い頃から優秀な兄アリストと比較され、常に「一番」であることを証明し続けなければならないという、強迫観念に近い承認欲求を抱えていた。

「どうしました? 自信がないなら、このまま逃げても構いませんよ。……『誰か』に、その椅子を奪われるのが怖いのでしたらね」

「……誰に、言っているの」

アイリスの魔力が、怒りと共に爆発的に膨れ上がった。

屈辱。だが同時に、彼女の心の中で「他の女たちを叩き潰して、私こそが唯一だと認めさせてやる」という歪な闘争心が、かつてないほど激しく燃え上がっていた。

「いいわ。その条件、受けて立つわ。……その代わり、私が貴方を屈服させた時は、私の足元に跪いて、私だけが特別だと泣いて縺れるがいいわ!」

「ええ、楽しみにしておりますよ、殿下」

ルーニーは、眼鏡を光らせて観覧席で記録を取るテイラーに合図を送った。

(……これで一人。残り二つの椅子を巡って、さらに面白い駒が集まるだろう)

試合開始の合図と共に、アイリスの雷撃が放たれる。

だが、ルーニーはその光の奔流を見つめながら、既に彼女の心が自分の掌の上で踊っていることに、暗い悦びを感じていた。

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