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第2部 第10話  断罪の別荘――王の「義」を問う

王都郊外、深い霧に包まれた湖畔の別荘。

そこには、返り血一つ浴びていない潔白な装いのフェルディナンド王子が、優雅にワインを傾けていた。

「……公爵家が暴走したのだ。私は監禁され、無理やり首謀者に担ぎ上げられた被害者である。これを見ろ、公爵からの脅迫状だ」

フェルディナンドが差し出したのは、巧妙に偽造された書状。彼はこれを盾に、王都の混乱に乗じて自らを「救国の王子」として演出し直すつもりだった。

だが、別荘の重い扉が、音もなく開かれた。

そこには、戦塵にまみれたラインハルトと、鋭い眼光を放つ近衛騎士ラーゼンが立っていた。

「な、なんだ貴様ら! ここは王家の聖域だぞ! 下烈な辺境伯が足を踏み入れて良い場所ではない!」

「殿下。その『聖域』の場所を私に教えたのは、貴方が信頼していたはずの近衛騎士ですよ」

ラインハルトが静かに告げると、ラーゼンが一歩前に出た。

「フェルディナンド殿下。私は、貴方が公爵と密会し、内城の防衛図を手渡す現場を、この目で見ておりました。……そして、この別荘に逃げ込むことも、すべて計算済みです」

「ラーゼン! 貴様、王家への忠誠を忘れたか!」

「……私は、真に忠誠を捧げるべき『王の器』を見つけたのです。それは、己の保身のために民を売る貴方ではない!」

ラーゼンは今や、ラインハルトの圧倒的な覇気と「義」に完全に心服していた。

フェルディナンドは顔を青ざめさせ、震える手で偽造文書を隠そうとするが、ラインハルトの冷徹な声がそれを遮った。

「無駄だ、フェルディナンド。シオン率いる情報局は、数ヶ月前から貴方の足跡をすべて追っていた。……私がなぜ、王都の危急に『1日』で駆けつけられたと思う? 貴方が反乱を起こすと分かっていたからだ。準備を整え、貴方が『取り返しのつかない大罪』を犯す瞬間を待っていたのだよ」

「貴様……! 一辺境伯が、王族の不穏を黙認していたというのか! それこそ反逆ではないか!」

「……そうだ。一辺境伯が証拠もなく王子を告発すれば、それこそが反逆。だから私は、貴方がその手を汚し、その証拠をこのラーゼン殿が押さえるまで待ち続けた。……すべては、この国から『毒』を抜き去るためだ」

ラインハルトは一歩踏み出し、へたり込む王子の喉元に、抜刀せず鞘のままの刀を突きつけた。

「フェルディナンド。お前には王の器など欠片もない。……ラーゼン殿、この男を捕らえよ。王国の法に基づき、然るべき場所へ」

「はっ! ラインハルト殿!」

ラーゼンが力強く応じ、かつては敬っていたはずの王子を、軽蔑の眼差しと共に引きずり出していった。

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