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第2部 第8話  義星の咆哮――騎士たちの再起

内城の最終防衛ライン。近衛騎士たちは満身創痍で、床に膝を突いていた。

「もはやこれまでか……。反乱軍に城門を破られるのも時間の問題だ……」

その時、返り血を浴びた五十騎の精鋭を率い、ラインハルトが広間に踏み込んだ。

顔の右半分を覆う赤い痣。その異様な風体に、騎士たちは一瞬、敵の伏兵かと身構え、嫌悪に近い戦慄を覚えた。

「何だ、その顔は……。化け物が助けに来たとでも言うのか?」

一人の騎士が力なく吐き捨てた言葉に、ラインハルトは歩みを止めず、静かに、しかし地に響くような声で応じた。

「……そうだ。化け物でも、悪魔でもいい。だが、私はこのハクザンからたった一日で、貴様たちの『義』を助けに参った。……剣を捨てて震えているのが、王国の誇り高き近衛か? ならば、そこをどけ。ここからは、私の部下たちが道を切り拓く」

ラインハルトは腰の刀を抜き放ち、その切っ先を崩れかけた城門に向けた。

「命が惜しい者は下がっていろ。死を恐れず、王女殿下への忠義を貫きたい者だけ、私の背に従え。……地獄の底まで連れて行ってやる!」

その圧倒的な覇気、そして「一人でも戦う」という孤独な覚悟に、騎士たちの胸の奥に眠っていた「武士もののふの魂」が火を吹いた。

「……馬鹿な。あんな若造に、これほど当てられるとは……」

「おい、立て! 辺境の若殿に、中央の騎士の意地を見せてやれ!」

嫌悪は一瞬で、男としての猛烈な「憧憬」へと変わった。

「ラインハルト殿! 背中は我らにお任せを!」

立ち上がった騎士たちの咆哮が、内城を震わせる。

反乱軍を押し戻し、安全を確保したラインハルトは、一人、王女エレオノーラの待つ最深部の私室へと向かった。

扉を開けると、そこには祈るように立ち尽くす彼女の姿があった。

ラインハルトは血に汚れた軍装のまま、彼女の前で静かに膝を突いた。

「……エレオノーラ殿下。ハクザン辺境伯、ラインハルト。……ただいま到着いたしました。お迎えが遅くなりましたこと、深くお詫び申し上げます」

いつもの、嘘偽りのない、真摯で謙虚な言葉。

張り詰めていた緊張が解け、エレオノーラの瞳から大粒の涙が溢れ出した。

「……ラインハルト……!」

彼女は王女としての立場も、周囲の目も忘れ、膝を突く彼の首に飛びつき、強く、強く抱きしめた。

戸惑うラインハルトの肩で、彼女は声を震わせて泣いた。それは、数年間の孤独と、この瞬間の安堵が混ざり合った、魂の叫びだった。

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