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第2部 第6話 タイトル:約束の義星――王都燃ゆ

王都ヴァロアは、建国以来最大の危機に瀕していた。

王位継承権第2位のフェルディナンド王子が、有力公爵家と結託して反旗を翻したのだ。

「兄上も、エレオノーラも、理想ばかりで力が伴わぬ。この国に必要なのは、私のような冷徹な支配者だ」

フェルディナンドの放った反乱軍五千は、夜陰に乗じて王都の城門を包囲。瞬く間に外郭を制圧し、今や国王と王女が籠もる内城の喉元まで迫っていた。近衛騎士団は防戦一方。城門が破られるのは、もはや時間の問題だった。

城内の奥深く、エレオノーラは震える手で最後の手紙を書き終えていた。

彼女の脳裏に浮かぶのは、あの赤い痣を持ち、誰よりも真摯な瞳で自分を見つめた辺境の主。

『ラインハルト卿……。もはや、貴方だけが頼りなのです。どうか、この国を、そして……私を助けに来て』

彼女は、信頼できる最速の伝令兵にその手紙を託した。城門が完全に封鎖される数時間前のことである。

――それから3日。

ハクザンの辺境伯邸。情報局長となったシオンが、血に染まった手紙を握りしめ、ラインハルトの執務室へ飛び込んできた。

「ラインハルト様! 王都より、エレオノーラ王女殿下の直筆書状です! 伝令兵は……ハクザンの門を潜ると同時に力尽きました!」

ラインハルトは、差し出された血の痕が残る手紙を静かに読み終えた。その瞳には、かつて関ヶ原へ向かった時のような、静かな、しかし凄まじい決意の炎が宿る。

「……3日か。伝令が命懸けで繋いだ3日間。シオン、軍の準備は?」

「はっ! 辺境伯軍、ならびにゴルザ殿の工作員部隊、すでに出陣の準備を整えております。ですが、ここから王都までは通常なら騎兵でも5日はかかります。今からでは間に合いません……!」

シオンの悲痛な叫びに対し、ラインハルトは不敵に笑った。

「5日だと? 甘いな。……『道』はすでに作ってある」

ラインハルトは、これまで賠償金をつぎ込んで整備してきた街道の地図を指差した。

彼は数年前から、ハクザンから王都へ続く主要道に一定距離ごとに「替え馬」と「休憩所」を配置した【伝馬てんま制度】を完璧に構築していた。すべては、この「もしも」の時のために。

「シオン、ゴルザに伝えろ。魔族の脚力を活かし、進軍を阻む障害をすべて事前に排除させよ。我らハクザン勢、これより不眠不休で駆け抜ける。……エレオノーラ殿下を、一秒でも長く待たせるわけにはいかん」

「全軍、発進! 王都の逆賊どもに、ハクザンの牙を見せてやれ!」

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