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第2部 第1話  要塞領土――不落のハクザン

あの帝国軍との死闘から、数年。

辺境伯領は、かつての傷跡を消し去るかのような、異様な活気に包まれていた。

「……これでは、ただの『復興』だ。元に戻すだけでは、また同じ悲劇が繰り返される」

17歳となったラインハルトは、さらに精悍さを増していた。

ハクザンは、常に帝国軍と魔族軍の両方に睨まれる最前線。ラインハルトは、この地を単なる復興ではなく、戦国時代の知恵を注ぎ込んだ「難攻不落の要塞国家」へと作り変える決断を下した。

その莫大な建設資金の源泉は、皮肉にもかつての敵からもぎ取ったものだった。

ハクザン沖の戦いで帝国軍を完膚なきまでに叩き潰したラインハルトは、敗走する帝国に対し、捕虜の解放と引き換えに、国家予算をも揺るがすほどの莫大な賠償金(慰謝料)を要求し、これを飲ませたのである。

「敵の金で、敵を防ぐ城を築く。これほど理にかなったことはない」

ラインハルトは、その資金を惜しみなく注ぎ込み、国境沿いにいくつもの「出城(砦)」を設置。それぞれの砦を狼煙と早馬の専用路で結び、相互支援が可能な防衛網を構築した。

さらに、都ハクザンの周囲には、戦国時代の「総構そうがまえ」を彷彿とさせる巨大な堀と、魔法攻撃さえも逸らす幾何学的な石垣を張り巡らせた。

「ラインハルト様。領民たちが、過酷な土木作業にもかかわらず、笑って働いております」

シオンの言葉に、ラインハルトはわずかに目を細めた。

賠償金をただ使うのではなく、土木作業に従事する領民に高い賃金を支払うことで、彼らに現金収入を与え、領地全体の経済を活性化させていたのだ。

「我々は、ただの辺境ではない。帝国と魔族にとって、喉に刺さった『抜けない棘』となるのだ」

要塞化していくハクザン。

だが、そのあまりに強固な「自立」と、潤沢な資金による急成長は、王都の中央政府に「辺境伯に野心あり」との疑念を抱かせることとなる。

そんな折、ハクザンの堅牢な門を叩く、一団の豪華な馬車が現れた。

それは王都から遣わされた、第一王女エレオノーラの使節団であった。

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