表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/128

第6部 第22話 旧領の残火――第四隊長マックスウェル

旧ハクザン辺境伯領。

かつて黄金の稲穂が揺れ、民の笑い声が絶えなかったその地は、今や厚い暗雲に覆われ、魔族の放つ瘴気に沈んでいた。

街の広場には巨大な処刑台が築かれ、統治者である魔将の威を借りた下級魔族たちが、家畜を追うように領民を駆り立てている。

その惨状を、崩れた民家の屋根裏から、テイラーは息を殺して見つめていた。

「(……ひどい有様だ。シオンの奴、あえて生かさず殺さずで、民の絶望を啜っていやがるな)」

テイラーの鋭い眼が、街の北端にある古い砦に向けられる。

そこだけは、魔族の軍勢に包囲されながらも、頑強な抵抗の意志を放ち続けていた。

「……野郎ども! 盾を引くな! この砦が落ちれば、領民を守る牙は完全になくなると思えッ!!」

怒号のような叫びが、砦の銃眼から響く。

ボロボロになった甲冑を纏い、片目を血で染めながらも、大剣を振るって魔族を叩き伏せる大男。

直参第4番隊長、マックスウェル。

ハルトが軍神として名を馳せていた頃から、その「不退転の忠誠」で知られた猛将である。

だが、その状況は「風前の灯火」と呼ぶに相応しいものだった。

背後に控える兵たちは飢えと疲労で限界を迎え、備蓄の矢も、魔法を放つための魔力も、底を突きかけている。

「(マックスウェルの旦那か……。生きていたのは重畳だが、もってあと数刻といったところか)」

テイラーは懐から通信用の魔導具(あるいはハルトから託された符)を取り出そうとして、手を止めた。

砦の正面、魔族の陣営から、一際巨大な影が動き出したからだ。

「……無駄な足掻きだ、マックスウェル。公子ハルトは死に、貴様らの神は消えた。……潔く、我が主、シオン様への供物となれ」

旧領を統治する魔将が、冷酷な笑みを浮かべて魔力の塊を練り上げる。

テイラーは、その正体をハルトに報告すべく、影に紛れてその場を離脱した。

(……急がねばならねぇ。旦那、あんたを待ってる『魂』が、まだここには残っていやがるぜ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ