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第6部 第5話 軍神の盤面――王都ルミナス襲撃計画

王都ルミナス。かつて白亜の輝きを誇ったその街は、今やシオンの野心と魔族の瘴気に包まれていた。その場末にある、鼠さえ寄り付かない安宿の一室で、ハルト(ルーニー)は地図を広げた。

「……いいか。好機は三日後、シオンとエレオノーラの『婚礼パレード』だ。ルミナスの民が狂熱に浮かされるその瞬間、この街を地獄へ叩き落とす」

ハルトの指が、パレードの予定ルートをなぞる。顔の半分を覆う「大谷吉継の如き痣」が、暗がりでどす黒く脈動していた。

「戦略を伝える。……エヴァ、テイラー。お前たちは王立魔導研究所へ向かえ。パレードの混乱に乗じて警備が手薄になった隙に、アイリスを叩き起こして連れ戻すんだ」

「……ハルト様はお一人で、あのパレードの渦中へ? 危険すぎますわ!」

エヴァが身を乗り出すが、ハルトは冷徹な眼光でそれを制した。

「俺がパレードのど真ん中で暴れれば、シオンの直属部隊も魔族の精鋭も、すべて俺に釘付けになる。……アイリスを確実に救い出すには、これしかねぇ。……エヴァ、爆縮石の準備は万全か?」

「……はい。ルミナスの各所に仕掛け終わりましたわ。……私の指先一つで、この街は火の海に変わります」

「テイラー。例の『一着のマント』は?」

「ここに。……ハルト様が望まれた『あのマーク』を、我が魂を込めて刻みましたわ。……これを翻す貴方の背中、想像するだけで悦びに震えますわ」

テイラーが差し出したのは、漆黒の生地に銀の糸で不気味な、しかし神聖な紋章が踊る、唯一無二の外套だった。

「……よし。……アイリスは、死ぬより辛い『再教育』に耐えているはずだ。あいつを救えるのは、同じ地獄を潜り抜けたお前たちだけだ」

ハルトは立ち上がり、マントを肩に羽織った。

痣に侵された顔の半分を隠しながら、その瞳にはかつての「狂王」を超える、静かな、しかし苛烈な殺意が宿っている。

「……シオン。お前がルミナスの大通りで民衆に手を振っているその瞬間、俺がその化けの皮を剥いでやる。……軍神の再臨を、葬列の鐘と共に聴かせてやるぞ」

「「……御意、ハルト様」」

復讐のカウントダウンが始まった。

「痣の冒険者」が纏う、唯一無二のマント。その裏に刻まれたマークが白日の下に晒される時、王都はかつてない恐怖に包まれることとなる。

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