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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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バイコヌール宇宙基地

―――9月22日 月基地


ブリーフィングルームに集まるフィリップと班長達。


レオンが端末を操作し、動画をモニターに表示させ報告する。

ディカプリオがエレナに見せた動画が表示される。


「これが、テイデで撮影された動画です。

テイデの観測班の報告によると、高度は6000m付近。

望遠鏡のサイズから導き出した大きさは最大で約三十メートル。」


「おお~、よく見つけたな・・・」と、フィリップ


「星を観測している連中だから、空の違和感に気づいたんじゃないですかね?」


ケンが予測した。

ミラーが続ける。

「こいつが、死神を運ぶ母艦って事か・・・」


「これで、一つの謎は解けましたね。

どうやって、死神が人間の集まる場所に出現できるのか。」


マーカスが動画を見ながら言う。

フィリップが頷き、眉を寄せる。


「多大な被害のおかげで、発見できたってのは・・・

――とても、残念だがな・・・」


「テイデの被害は?」

アリサがレオンに尋ねた。


レオンは画面を操作し出てきた情報を見て、眉間にしわを寄せた。


「天文台スタッフ、死亡4、重体12、重傷37、軽傷109。


避難民・・・死亡7000以上、行方不明318、重体重傷1500以上、軽傷は不明。

詳細は、粉砕された遺体が多く不明だそうだ・・・


死亡者数も、来ていた数からの逆算で、

山を登ってきていた避難者数に関しては不明らしい。」


ブリーフィングルームがシンと静まる。


「・・・マジで気持ち悪くなるわね・・・」


アリサが両肘を机に置き、手の甲に額を押し付けうなだれる。

フィリップが尋ねる。


「エレナが重体だと聞いたが?」


ケンがその質問に答える。


「はい・・・

死神の落下地点にいたらしく、頭部に裂傷、腰椎にヒビが入っているそうです。

あと、全身打撲と小さい裂傷が無数とのことです。」


「腰椎か~・・・しばらく動けないわよ。」


医療班のアリサが言った。


「アキヒコの話だと、しばらく療養になるだろうと・・・

代わりに補助員が入るそうです。」


「なんで、落下地点にいたんだ?

無線室か自室にいたんじゃないのか?」


リードが尋ねる。

ケンは困った顔をする。


「・・・実は、我々が送ったメッセージが原因だそうです。」


「「「え!?」」」


全員がケンの方を見る。

ケンは眉をしかめ、後頭部をイライラするように掻いた。


「19日の警告文です。

“避難民が集まりすぎると、死神がくる可能性が高くなる”ってやつです。


あの警告文を読んだエレナが“登山道を登ってくる避難民”を確認しに行ったそうで・・・」


フィリップが手を額にあて、天井をみる。


「・・・・・・なんてタイミングで・・・」


みんな黙ってしまった。

数分の沈黙が続き、フィリップが声を絞り出す。


「起きてしまった事はしょうがない・・・

我々は新しい情報を伝え続けるのが仕事だ。


辛いが、前を向こう。」


皆が頷く。

レオンも話題を変える為、報告する。


「あ、もう一つ報告が・・・

モンゴルで被害者が1名出たらしい。」


「えっ? 奇跡のキャンプ地が?」


アリサが驚く。

ミラーが尋ねる。


「死神なのか?」


レオンはタブレットから画像をモニターに映す。

モニターに殺害されたビレグの画像が現れる。

すると、全員がその画像に見入った。


「死神かどうかわからんが、胸部から右肩にかけて焼き切られていたようです。」


「これは、即死ね。」

アリサが診断するように、真剣な目でつぶやく。


「レーザーなのか・・・?」

リードが尋ねた。


「死神がレーザー使うのは、初めての事例じゃないですか?」


ケンも質問する。


「ドローンタイプが使用した記録がありますよ。」


マーカスが答えると、皆が驚く。


「どこにそんな記録が?」


フィリップが尋ねた。


「使った事例の報告ではないんですが、ドローンに襲われた記録の中に、

焼かれた遺体があったのを覚えてるだけです。


多分、同じでしょう。」


皆が感心したような顔をする。


「ドローンは体当たりタイプだけだと思っていたな・・・」


フィリップがつぶやくと、マーカス以外が小さく頷く。


その瞬間、ブリーフィングルームのスピーカーが割れた。


「こちら管制室! コマンダー! 至急管制室へ戻ってください!

カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、レーザー通信が入ってきてます!!」


「なんだと!!」


フィリップはスピーカーの方を振り返り、座っていた班長が立ち上がる。


「わかった!すぐ戻る!!」


そう言うと、ブリーフィングルームから出ていく。

レオンとケンも続いて、出て行った。


残った、ミラー、リード、アリサはお互いの顔を見る。


「オレ達も行こう。」


ミラーがそう言うと、リードとアリサが頷き、ブリーフィングルームを出て行った。


―――


制御室に、フィリップ及び班長がなだれ込んでくる。


「コマンダー、お待ちしていました。」


ブリーフィングルームへ連絡してきた通信担当のクルーが振り返り、

焦ったようにフィリップに声をかける。

フィリップはそのクルーのそばまで歩み寄った。


「ほ、本当に・・・バイコヌール宇宙基地なのか・・・?」


「はい・・・レーザーの発射位置は、間違いなくバイコヌール宇宙基地です。」


「分かった。通信を開け。」


「はい、通信開きます。」


クルーがスイッチを押し、回線が開かれる。


「こちら、月基地シャックルトン。

コマンダー、フィリップ・アンダーソン。」


「こちらはバイコヌール宇宙基地、

コマンダー、セルゲイ・アレクサンドロヴィチ・ヴォルコフ。


コマンダー・アンダーソン、こうして連絡が取れたことを喜ばしく思います。」


「コマンダー・ヴォルコフ。私も非常に驚いています。

そちらの基地は生きておられたのですね。」


「はい。NOBUNAGAの攻撃はありましたが、それほど被害はありませんでした。」


管制室にどよめきが走る。


「そちらの被害が少なかった? 本当ですか?」


「はい。我々も不思議に思い調査しましたが・・・どうやらNOBUNAGAは、

途中にアナログ機器が挟まると、そこから先へは侵入できないようなのです。」


再びどよめきが起きた。

フィリップは目を見開き、後方のレオンたちは互いに顔を見合わせる。


「なんと・・・」


「自動運転の車などは暴走しましたが、基地内は一部の機能を失っただけで済みました。

先日ようやく復旧したところです。


短波通信で、シャックルトンが無事だという情報は受け取っていましたが、

こちらの復旧が遅れ、コンタクトが今になってしまいました。」


「ロシアの月基地は? こちらからの呼び出しには応答がありませんが・・・」


「残念ながら・・・ルナ・グラード基地は、こちらからの通信にも応答がありません。」


「そうですか・・・」


「我々としては、シャックルトンが生き残っていただけでも、とてもうれしいです。

短波放送で初めて聞いた時、全員歓声をあげました。


その後の活動も詳しく聞いています。

月が情報ハブとして地球の中継ポイントをつなぎ、人類の希望を紡いでいると・・・」


「ですが・・・そのせいで、被害も出てしまいました・・・」


「いえ、新型の死神の出現は想定外です。こんなに早く対策してくるとは・・・

さすがはAI・・・人間の時系列とはまったく異なります・・・」


「はい。――コマンダー・ヴォルコフ、新しい情報があります。

新しい死神は空中母艦を使って長距離を移動することがわかりました。

今から情報を送ります。受信してもらえますか?」


「準備させます。しばらくお待ちください・・・」


「準備できました。どうぞ――」


フィリップは通信クルーに顎で合図する。

クルーはすぐに機器へ向き直った。


「了解。データ送信します。」


操作音が響く。


「――送受信完了しました。会話に戻れます。」


「コマンダー・アンダーソン。データ確認しました。

これは・・・もしかしてテイデ天文台の?」


「そうです。襲撃を受ける中、観測員が望遠鏡で発見したそうです。

そちらの基地にも来るのではないでしょうか?」


「いえ、昔使っていたレーダー機器を稼働させましたが、そういった影は見受けられません。

今の空は本当に静かです。」


NOBUNAGAによって世界中の飛行機は姿を消し、

レーダーには何も映らなくなっていた。


「そうですか・・・一応警戒しておいてください。」


「・・・分かりました。

ところで、提案があるのですが。」


「なんでしょう?」


「NASAが沈黙した以上、そちらに補給船は来ませんよね?」


「・・・はい。そうです。」


クルーたちがざわつき、フィリップを見る。


「残りの食料は?」


「あと、10日ほど・・・」


再びざわつきが広がる。


「・・・それはよかった。」


セルゲイの言葉に、フィリップは眉をひそめた。


「・・・よかったとは?」


声色が変わったことに気づき、セルゲイが慌てて補足する。


「あ、申し訳ない。説明が足りませんでした。

実は、バイコヌール宇宙基地には、ルナ・グラードに送る予定だった補給船があるのです。」


「えっ、本当ですか!?」


「はい。」


レオンたちの顔が一気に明るくなる。


「もしかして、それを・・・?」


「ええ。ルナ・グラードが無い今、シャックルトンに送る方が人類のためになります。

もちろん、今後も定期的に補給船を送れればと思っています。」


管制室に小さな歓声が上がった。


「それは、とてもありがたい申し出です。」


「ただ・・・」


「何か?」


「先ほどの死神が襲ってこなければ・・・

あと、NOBUNAGAがロケットを迎撃しなければよいのですが・・・」


「なるほど・・・人間側の攻撃ミサイルは迎撃されるとレポートにありましたね・・・」


「ですが、人類の希望を見捨てるわけにはいきません。

今から発射の準備に入りますので、しばらくお待ちください。」


「分かりました。ありがとうございます。」


「そろそろウインドウが閉じるようです。

またご連絡いたします。では――」


「――通信閉じました。」


通信クルーがフィリップに報告した。


「ふう・・・」


フィリップは緊張が解けたのか、目を閉じて額を袖で拭った。

そして目を開けると、制御室のクルーたちが一斉にこちらを見ていた。


「・・・ど、どうした・・・?」


視線の意味は分かっていたが、フィリップはとぼけるように尋ねた。

レオンが近づき、フィリップの肩を軽く叩く。

振り返ると、レオンは目を閉じてゆっくりと頷いた。


二人はそろってクルーに向き直り、胸に手を当てると、視線を落として謝罪した。


「黙っていたこと、すまなかった。時が来たら告げるつもりだったんだ・・・」


クルーたちは互いに顔を見合わせ、ふぅ〜と息を吐いた。


「気づいてましたよ。」


フィリップとレオンは顔を上げ、ぽかんとした表情になる。


「NASAが応答しないのに補給船が来るわけないって、前から噂してました。」


「・・・・・・。」


「コマンダー、我々クルーを甘く見てませんか?」

女性クルーが軽く突っ込む。


「そうですよ。私たちだって月基地クルーの一員です。

普通に気づくし・・・誰も言いませんでしたけど、覚悟も決めてましたよ。」


別の女性クルーも続けた。


「しかし、まさかこんな形で知るとはな。」


「コマンダーの・・・さっきの顔、相当焦ってましたよ。」


管制室は一気ににぎやかになっていく。


「・・・お前たち・・・」


フィリップは言葉を失い、涙目になった。

クルーたちの覚悟が胸に刺さった。

レオンは隣でずっと目を伏せている。


後ろで見ていたアリサ、ケン、リード、ミラーが笑い合い、

不愛想なマーカスの肩を軽く叩いた。


「よし、思いもよらなかった場所から援助が届くことになった。

我々の任務を、さらに引き締めなければな!」


「はい!」


管制室にいるクルー全員が、大きな声で返事した。


―――


7人は、再びブリーフィングルームに戻ってきた。


「――しかし、まさかアナログ機器がバイコヌール宇宙基地を守るとは・・・」


フィリップが腕組みしつつ、つぶやいた。


「よく考えれば、当然と言えば当然ですね。」

マーカスが続けた。


「ロシアって、動いてる物は“変える必要がない”って文化ですからね。

古い装置が残ってたのが功を奏したんです。


NOBUNAGA的には、侵入はしたけど、迷路みたいな場所だったって事でしょう。」


「我々にとっては、バイコヌール宇宙基地が残ってたことは奇跡だけどな。」

リードが話した。


「そう、まさに奇跡!」

アリサがリードの肩を叩く。


「これでNOBUNAGAに、逆転パンチを食らわせることができるかもしれない。」


ミラーがそう言いながら、フィリップとレオンを見る。

フィリップとレオンが頷く


「ああ・・・

任務の終わりが無くなったことは、人類にとって朗報だ!


あとは、無事に打ち上げが成功してくれればだが・・・」


少し全員が黙り、間があく。

ケンがその空気を換えようとする。


「ほらほら、今、失敗のことを考えても意味がないですよ。」

パンパンと手を叩く。


「やることはいっぱいあるでしょ? レオン!」


「あっ、ああ、そうだな。 すまん。

では、まずは途中までだったモンゴルの件を再開しよう。」


レオンが、タブレットを使って再びモンゴルで殺された死体をモニターに出す。


「ドローンの話の途中でしたね。」

ケンが思い出したように言った。


「レーザー兵器が別のレポートにあった。って事だったな・・・マーカス?」

ミラーがマーカスに尋ねた。


「そうです。 そんな死体があったって報告です。

レーザーとは明記されてなく、死体の状態だけが報告されてました。

場所は・・・南アフリカ天文台からの報告・・・ウォータールー・ベイ・フォレスト保護区の避難民キャンプだったかと・・・」


全員が再び“ほぉ・・・”と感心する。


「なにか?」


「いや、みんな“すげえな”って思ってんだよ。」

首をかしげながらリードが言うと、アリサが続ける。


「ほんと、あんただけよ。 そんなに詳しく覚えられるのは。」


「ウォータールー・ベイ・フォレスト保護区も“被害が少ない”んですよ。

モンゴルと同じように、死神ドローンは遠目に毎日姿を見せるらしいんですが・・・」


アリサは、嫌味に“嫌な顔をせず”話を続けるマーカスを見て、舌打ちするような顔をする。


「なんか引っかかるな・・・遠目に姿を見せるだけ、か。」


どこか腑に落ちない顔をして、ミラーがつぶやいた。


「私もそう思う。」

フィリップが頷きながら言った。


「そうですね。 被害が少ない場所が他にないか調べるべきですね。」


マーカスの答えに、フィリップが腕組みを解き、

両手を机に置いて前のめりになりつつ、全員を見ながら言う。


「そうだな・・・

この件、調査するように指示を出そう!

頼めるかレオン。」


「了解。」

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