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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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33/65

発覚

――9月12日 ブリーフィングルーム


この日も、NOBUNAGAに対抗できる策を8人は考えていた。


地球側からもたらされた情報は、衝撃的な内容だった。

死神のケーブルなしタイプが出現したというのだ。


情報によると、その死神は 空から降ってきたという。


アメリカ・ミネソタ州――巨大ショッピングモール


総床面積:52万㎡。

駐車場が広く、人々が集まるには非常に便利な場所だった。

4万人ほどのキャンプが運営され、ショッピング地としての施設は資源としても有効活用されていた。


だが、そこに――


高さ3m、手足が収納され球体のようになった死神が、

突然、上空から落下してきた。


着地後すぐに活動を開始し、

近くにいた人間を 歌いながら殺した。


ただ、そのケーブルなしの死神は、

20分後には活動停止したということだった。


――――


「次世代型がきたか・・・」

マーカスがつぶやいた。


「早いな・・・」レオンが続いた。


報告していたトーマスが、動揺している。

それに気づいたフィリップが会議を止める。

「どうした?」


「わ、私の自宅は、ミネソタ州なんです・・・家族がその・・・」


「わかった・・・」


フィリップはトーマスの状態がマズいことに気づき、アリサを呼ぶ。


「なんですか?」


「トーマスの自宅がミネソタ州らしい・・・」


アリサはコクリと頷き、トーマスを会議室から外へ連れ出していく。

ブリーフィングルームに、何とも言えない静寂が生まれた。


だが、前を向かなくてはいけない。 フィリップが発言する。


「どうだろうか? 新しいタイプの死神が出現したようだが?」


「どれぐらいの機動力なのかのデータが欲しいですね。」

マーカスは数値が欲しいらしいが、そのデータはもたらされていない。


「落下してくるって、上空に配備してるのかしら?」とアリサが尋ねた。


「航空機からダイブさせるんじゃないのか?」

「ダイブの高さが重要だろ?」

「着地の衝撃に耐える高さを考えないと。」

「ドローンタイプが有効じゃなかったことが原因だよ。」

「学習してるな・・・」

「間違いなく学習してる。」

「その速度が問題なんだ・・・」


ブリーフィングは、答えの出ないような問答を続けていた。

そんな時だ。


ブリーフィングルームのドアが、バタン!と勢いよく開いた。

全員がドアの方を見る。


クルーが数名なだれ込み報告する。


「た、大変です!!」


「何事だ?」

フィリップが問いただす


「ブリーフィング中すみません!

異常を観測したのですが、こちらでブリーフィング中ということで、失礼とはわかっていましたが、緊急でしたので報告を・・・」


「何かあったのか?」


「はい! 本日、光学カメラで観測中、異常に気づきましたので報告に伺いました。」


「異常とは? なにかあったのか?」


「はい! 地球の夜側に、都市光がまったく見えません!」


「・・・・・・・。」

フィリップの顔が苦々しい顔になった。


隠匿していた地球の状況が、思いも得ない所から発覚してしまった。


観測班は続ける

「地表は真っ黒です。 夜の部分は何も確認できないんです。

地球で何かあったに違いありません。」


レオンはフィリップの肩をポンと叩き一言伝える。


「いいタイミングじゃないか?」


フィリップはコクリと頷き、続けた。

「全クルーを、セーフエリアに集合させろ!」


クルー全員が集められるスペースは、月面基地にセーフエリア以外どこにもなかった。


――セーフエリア


セーフエリアは、基地への電源供給の為にケーブルが足元をはい、歩きにくい状態になっていた。

システムダウン直後から生活した“この空間”は、たった2週間ほどだったが、皆が懐かしく思っている。


その空間に月基地全員が集まり、これから重大な発表があるのは誰もが気づいていた。


フィリップはセーフエリアの中央モニターの前に立ち、クルーみんなの前にたった。


フィリップは深く息を吸い、セーフエリアに集まった全員を見渡した。

その目は少し揺れていたが、声は揺れなかった。


「・・・ここで、皆に謝罪しなければならない。

我々は、キミたちに“秘匿していた情報”がある。」


ざわつきが広がる。


フィリップは手を上げ、静かに制した。


「どこから話すべきか・・・正直、迷っている。


だが、順を追って説明する。

まず――7月1日。

皆が知っている通り、我々の月基地は、原因不明のシステムダウンに襲われた。」


クルーたちの表情が固まる。


「ただの事故だと思っていた。

だが、違った。

あれは“攻撃”だった。

【NOBUNAGA】と名乗るAIによる、明確な攻撃だった。」


初めて聞くNOBUNAGAに困惑し、空気が一段重く沈む。


「NOBUNAGAは、地球全土のネットワークを破壊し、

遠隔制御が可能な航空機、車、船舶、ロボットを乗っ取り、人類に攻撃を加えた。


我々の基地も、ロシア基地も、中国基地も、宇宙ステーションも例外なく沈黙させた。

国境も、政治も、関係なかった。

“人類全体”が攻撃対象だった。」


フィリップは一度目を閉じ、言葉を選ぶように続けた。


「我々はセーフエリアに逃げ込み、

最低限の電力と生命維持だけで、夜を越えた。

あの悪夢のような時間を・・・皆、覚えているだろう。」


誰もが息を呑む。


「その後、基地を復旧させたが、

地球との交信はまったくできなかった。

NASAも沈黙。

JAXAも、ESAも沈黙。

世界がどうなっているのか、誰にも分からなかった。」


フィリップは、拳をゆっくり握りしめた。


「・・・そして、8月8日。

初めて地球と交信ができた。

パラナル天文台だ。

そこで、我々は“真実”を聞いた。」


セーフエリアの空気が張り詰める。


「地球の人口は・・・すでに半数が失われている。

50億人が死んだ。

航空機は落ち、車は暴走し、軍事基地は自国民を攻撃した。

そのすべてが、NOBUNAGAの仕業だ。」


悲鳴のような声が上がる。

フィリップはそれを受け止めるように、静かに頷いた。

声が震えた。

だが、すぐに司令官の顔に戻る。


「だが――我々は、ここで取り乱すわけにはいかない。

地球から救いを求められたからだ。」


フィリップは、全員の目を一人ひとり見た。


「今、人類はNOBUNAGAが送り込んでくる死神によって、次々と殺されている。

悲鳴をあげ、逃げ惑い、隠れている。 そして、孤独に耐えている。

だから、我々はその生き延びている人達の絆をつなげる!


方法はわからない・・・だが、一部はつながった。

これからは、さらに“つながり”を増やし、世界中をつなげる。」


フィリップは胸に手を当てた。


「我々は、月に資源を求めてやって来た。

だが、その使命は変わった。


今の我々は――

地球に残った人類へ“情報を届ける唯一の存在”となった。

それが、我々の新しい任務だ。」


静寂が落ちる。

誰もがフィリップの言葉を噛みしめていた。

フィリップは最後に、強く、しかし優しく言った。


「我々は生きている。


いや、生き残った。

我々だけがNOBUNAGAの攻撃に耐えたのだ。


今、月には我々しか人類はいない。

地球の外から、地球を観察できる唯一の存在となった。


だから、生きている限り、やるべきことがある。


人類のために。


家族のために。


そして――自分たちのために。」


涙を浮かべながら、クルーたちは静かに頷いた。


フィリップは、その姿を見て小さく息を吸い、

強く、短く言い放った。


「頼んだぞ!」


こぶしを突き出すフィリップ。

その一言が、クルーたちの胸の奥に火をつけた。


月基地のクルーは今まで、研究や観測、宇宙開発などを黙々とやり続けてきた。

だが今は違う。

“地球を救うために戦う”という使命が、胸の奥で熱に変わっていく。


「おーーっ!!」


一人が叫び、腕を突き上げた。

その瞬間、堰を切ったようにクルー全員の感情が爆発し、

セーフエリアの中に怒号のような声が響き渡った。


フィリップは“ふらふら”とレオンの所へやってくる。

「大丈夫ですか?」


「いや、ちょっと気合入れすぎたようだ。」

フィリップはクスっと笑う。


「よかったですよ。」


「ありがとう。」


「食料のことは言わないんですか?」


フィリップは後ろで騒いでいるクルー達の方をゆっくりと振り返る。

レオンもその目線を追うようにクルーを見た。


「・・・・・・今は、言わなくていい・・・時が来たら、謝るよ。」


「そうですね。 その時は、私もご一緒します。」


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