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〈サイレント・ワールド〉  作者: ブラックななこ


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1/9

歌う死神

この物語は、

“音を立ててはいけない世界”で生きる少年の記録です。

世界の謎は、彼の視点とともに少しずつ明らかになります。


ガチSFです。 お付き合いできる方、よろしくお願いします。

静かな物語ですが、どうか最後まで見届けてください。

ひとつ、光を放ってはいけない。

ひとつ、火を焚いてはいけない。

ひとつ、大声で話してはいけない。

ひとつ、人間のように歩いてはいけない。


ひとつでも約束を破ると、死神がやってくる。




物音ひとつしない――真っ暗で、静寂だけが支配する夜の世界。

その場所には空を覆うような建物はなく、広大な平原のように開けている。

遠くの地平線には稜線が連なり、はるか彼方に山々があることがわかる。

足元には、かつてビルだったと思われる瓦礫が転がり、

折り重なって小さな丘のような影をつくっていた。


この時間帯は、地上よりも空の方が明るい。

今日は月が昇らないが、頭上には光の洪水のような満天の星空が広がっている。

文明時代の光を放つ建物はすべて失われ、

瓦礫だけが残った地上は闇に沈み、星空の方がはるかに明るいのだ。


その星空を、天の川が神々しく二つに割っていた。


そんな深い闇の中、少年は瓦礫に腰を下ろし、ただ空を見上げている。

その瞳には、天の川の光が静かに映り込んでいた。



「きれいだなあ・・・

昔は、この星空の中を人類が飛び交っていたって教えてもらったけど・・・

本当なのかなあ~・・・」


少年は少し寂しそうに小声でつぶやいた。


時は2055年


といっても、現在は時代を明確にするようなものではなく、

今が本当に2055年なのか、正確な日付なのかすら、

人類には分からない程に世界は混乱していた。


「オレもいつかこの星々の中を旅する事は出来るのかなあ・・・」


その時、500メートルほど後方の瓦礫の奥から、突然まばゆい光が走った。

真っ暗な世界では、その光は異様なほど遠くまで伸び、少年の足元まで届く。


直後、怒号が闇を裂いた。


少年は反射的に身をかがめ、息を潜めた。



「だ、だれだぁ!? ライトをつけたのはぁ!?」


小さな子供がLEDランタンを持っていた。


「ああああああっ!! す、すみません!! すみません!!」


子供の母親と思われる女性が、叫びながら子供の方へ駆け寄ると

ランタンを奪い、すぐさまライトを消した。

そして、再び暗闇が世界を覆うが、声を潜めていた者達がざわめき始める。


「急げ! やつらが来るぞ!!」

「に・・・逃げろ・・・」


暗闇なのでよく見えないが、瓦礫の中をバタバタと歩いている音が聞こえる。


「はっ!?」


少年の上を何かが通り過ぎるような気がして上を見る。

その直後、東の上空から圧縮された空気の壁が押し寄せ、

地面に向かって一気に叩きつけられた。

大きな瓦礫ですらブルブルと震え、少年の耳がキーンと鳴った。


ズズゥゥーーン! ドガガガガーーーッ!!


巨大な何かが、東の空から放物線を描きつつ落下してきて、

先ほどの光を放った場所に着弾し、同時に轟音が鳴り響く。


その衝撃によって地面が巻き上げられ、建物の素材がぶつかり合い、

激しい破壊音とまばゆい火花をまき散らしながら

パッ!パッ!っと周辺を照らし出す。


その瞬間、人間や人間の一部が、

衝撃によって弾き飛ばされているのが、少年には見えた気がした。

そして、少年のいる場所に、細かい瓦礫のかけらがバラバラと空から降ってきた。


「うわああああっ!!」


逃げ惑う人々の声が暗闇から聞こえてくる。


巨大な何かは、光を灯した辺りに着地して、

そこから100mほどをなぎ倒しながら停止した。

すると、摩擦で発せられる火花が次第に収まり、

世界は再び闇に包まれる。


巻きあがった土煙が徐々に消えると、

先ほどまで見えていた満点の星空は、

巨大な真っ黒シルエットで一部分が見えなくなっていた。


「・・・で・・・でけえ・・・・!?」


少年は自分の体が無事なのを確認すると、その場を離れようとする。


――パシッ!!


その時、何者かによって少年の腕をつかんだ。

少年がつかまれた腕の方を振り返る。


(動くんじゃない!!)


小声だが、しっかりとした男性の声が、

少年を動かないよう引き留めた。

少年は声の主の方をみるが、

暗い影の中から伸びていて、それが誰なのかすら確認できない。


(ここなら大丈夫だ。

ヤツの熱センサーにはひっかからない・・・じっとしてろ!・・・)


少年はコクリとうなずき、その場に身をかがめた。


落ちてきた巨大な黒い影は、

上に伸びる動きを見せると、

伸びた物体が地面に振り下ろされる。


ドガアアーーーッ!!


再びの轟音と共に、残骸と人だったものが衝撃によって巻き上げられる。


「うわあああああーーっ!!」


生き延びた人間が叫びながら、

巨大な影から逃げるように走り出す。


(バカな連中だ・・・動いたらヤツラの思惑通りなのに・・・)


闇の中から少年を助けた男の声が聞こえる。


少年は興味深々で瓦礫の隙間から巨大な影の方を見ると、

振り下ろされる影によって発生する飛び散る火花で、

巨大な影の姿が瞬間的だが部分的に浮かび上がる。


振り下ろされる影は、

どうやら腕のようだが、腕と呼ぶにはあまりにも関節が多く、しなっている。

鞭のような動きで、何度も何度も地面に振り下ろされている。


逃げ惑う人間を追って進んで行く為、

少年の見ている位置からでは、障害物で徐々に見えなくなっていく。


少年は好奇心を抑えきれず、視界を広げようと頭の位置を上げようとすると、

闇の中から声がした。


(それ以上頭を上げると、ヤツのセンサーに引っかかるぞ。

朝になればいくらでも見れるんだ、今は我慢しておけ。)


少年は一度声の方を向くと、

ゆっくりと頭を下げ、音を出さないように寝ころんだ。

轟音は響いているが、徐々に遠ざかっているようだ。


♪~~~♪~~♪~~~


少年は轟音の中に、小さく流れる音楽のようなモノに気づいた。


(??? あれ? 何か音が・・・違う・・・音楽・・・??)


(聞こえるのか?)


再び闇の中から男の声がした。

少年は頷く。


(う、うん・・・なんか電子音のような音が・・・)


(さすが・・・若いな。 俺には、まったく聞こえねえぞ。

その音は歌だ。

アイツラは歌いながら人を殺すんだ。

歌う死神さ。 狂ってやがるよ・・・)


男の説明を聞いて少年はごくりと息をのんだが、

少年の興味は高鳴った。


(何で歌うのさ?)


少年の反応に、男は少し笑いがこぼれた。

なぜなら、こんな状況でこんな説明をしている自分も、

それを真面目に聞く少年も常識外れだったからだ。


(詳しくは知らないけどな・・・

あいつらの始祖が音楽を元にしていたからだとか、

そんな話を聞いたことがあるな・・・)


それから20分ほど経った頃に轟音が止み、

世界は闇と静寂に戻った。


「約30分か・・・次世代にはまだなってねえな・・・」


先ほどの小声ではなく、闇の中の男がつぶやいた。

少年が闇の方を見ると、時計とその周辺がボヤッと浮かび上がっている。


「ひ、光!? だ、ダメです!」


「ん? この光は大丈夫だぞ・・・」


「えっ?」


「少年・・・これ見るのは初めてか?」


少年は興味津々なのか、2回すばやく頷いた。


「そうか・・・これは蓄光ってやつだ。

そして、この光はヤツラのセンサーにはひっかからない。」


「?」


「発光生物や光る鉱石って知らないか?」


少年は首を横に振る。


「蓄光ってのは、

昼間の光を蓄えて、暗くなると発光する素材だ。

大体、鉱物などの素材だな。」


「そんな鉱物があるんだ・・・。」


「地球上には、光を放つ生物や、鉱物は無数にあるんだぞ。」


「ええっ?」


「まあ、知らないよな。 ホタルって知ってるか?」


「う、うん・・・夜に発光する虫だよね。」


「そうだ。

ホタルは体内に光る成分を2つ持っていて、

その2つを反応させて発光するんだが、

そんな自然界の光に反応すると、ターミナルが足らなくなるんだ。」


「ターミナル?」


「おい、おい、少年! 何も知らないんだな・・・

ターミナルというのは、先ほど暴れまわっていた死神の事だよ。」


「あの巨大な・・・」


「そうだ。

ターミナルは、オレ達人間を見つけると、殺しにやってくる死神だ。

人工的な光や、熱を検知すると、人類を抹殺にやってくる。」


「あれが・・・」


「だが、無数にいる発光生物の光に反応させてみたとしたら、どうなると思う?」


「敵じゃ無い物を・・・攻撃することに・・・なる?」


「そうだ! よくわかったな!

無駄な攻撃をすることになるし、ターミナルを大量に消費してしまう。

だから、この蓄光程度の弱い光にはヤツラは反応しない。」


「そうなんだ・・・」


少年は、先ほどまでの緊張感から抜け出した事に加えて、

その腕時計が放つ弱い光を見ていると、急に眠気が押し寄せてきた。


「フアァァ~・・・」


「眠かったら寝ていいぞ。」


「でも・・・話が聞きたい・・・し・・・」


「フッ・・・ 明日起きたら教えてやるから、安心して寝ろ。」


 その言葉に安心したのか、押し寄せる睡魔にあらがう事ができずに少年は深い眠りに落ちるのだった。


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