9. 完全勝利と約束
ゆりねの言葉は決定打だった。
淡路は膝から崩れ落ちるように地面に手をついた。
プライドの塊である学級会長が、俺たち園芸部の前で土下座をしたのだ。
「……すまなかった。もう二度と、君たちには関わらない」
「誓うか?」
「誓う……! だから、お願いだ、この匂いをなんとかしてくれ……!」
淡路の声は震えていた。
恐怖と屈辱。そして何より、自分の地位を守りたいという保身。
まあいい。これ以上追い詰めても、玉ねぎの汁が飛ぶだけだ。
「分かった。ただし、条件がある」
「じょ、条件?」
「今後、裏庭の鍵は俺が管理する。生徒会も学級会も口出しするな。ここは『聖域』だ。分かったな?」
淡路は何度も頷いた。
俺はため息をつき、道具小屋からスコップと石灰の袋を取り出した。
「どけ。作業の邪魔だ」
淡路たちが這々の体で逃げていく。
俺はコンポストに向かい、腐敗した生ゴミに石灰を撒き、手際よく土を混ぜ返した。
数分後。
強烈だった悪臭が、嘘のように消えていく。土の微生物が呼吸を始めた証拠だ。
「……終わったぞ」
俺が汗を拭うと、ゆりねがタオルを差し出してくれた。
さっきまでの冷徹な聖女の顔は消え、いつもの少し泣きそうな、柔らかい顔に戻っていた。
「お疲れ様、栗原くん」
「お前こそ。……まさか、あんな脅し文句が言えるとはな」
「ふふ。誰かさんの影響かもね」
彼女は悪戯っぽく笑った。
俺たちは顔を見合わせ、初めて声を上げて笑った。
ざまあみろ。俺たちの勝ちなんだよ。




