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6. 天然の報復

 園芸部が封鎖されてから三日。

 予想通り、学園はパニックに陥り始めていた。


「うっ、なんか臭くない?」

「なんだこの匂い……生ゴミみたいな……」

「キャッ! また虫! やだ、大きいハエ!」


 昼休みの教室。

 あちこちで悲鳴と不満の声が上がっている。

 窓を開けても無駄だ。むしろ、外から風に乗ってその「異臭」はやってくる。


 俺は自席で涼しい顔をして本を読んでいた。

 クラスの連中は知らないだろう。この悪臭の原因が、彼らが忌み嫌って封鎖した「裏庭」にあることを。


 裏庭の奥には、学園の食堂から出る生ゴミを処理するコンポスト(堆肥場)がある。

 普段は俺が、消臭効果の高い『ミント』や『ローズマリー』を大量に植え、さらに定期的に土を混ぜ返すことで発酵を促し、悪臭を抑え込んでいた。

 だが、立ち入り禁止になったせいで、誰も土を混ぜない。ハーブへの水やりも止まった。

 結果、この連日の高温で生ゴミは腐敗し、枯れたハーブは防壁の役目を果たさなくなった。


 まさに自業自得だ。


「……栗原くん」


 前の席から、ゆりねがこっそりと振り返った。

 彼女もハンカチで鼻を押さえているが、その目は笑っている。


「これ、栗原くんの予言通りね」

「言っただろ。俺がいなくなればこうなるって」

「淡路くん、すごい顔して走り回ってたわよ。『原因を特定しろ!』って」


 ざまあみろ、とは言わなかったが、俺たちは視線だけで通じ合った。

 淡路は「園芸部は危険だ」と言って封鎖した。その結果がこれだ。

 あいつは今頃、自分の決定が学園の環境を破壊したことに気づき始めているはずだ。


「さて、そろそろ第2波が来る頃だな」

「えっ、まだあるの?」

「ああ。匂いの次は、虫だ」


 俺が窓の外を顎でしゃくると、黒い小さな影の群れが、ブーンという羽音を立てて校舎に接近してくるのが見えた。

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