第9話 この贅沢な悩みに名前って付いてるのかな?
ゲーム脳あるあるだと思うんですが共感してくれますか?
今日から生理休暇で2連休。
以前なら無給の日が続く事にプレッシャーを感じていたけど、今なら違う。
その違いを実感するためにも、まずは体調不良を押して郵便局に行って昨日の儲け分からキリ良く8万円を家賃として振り込む。
増えた一か月分の家賃を一括+お釣りが出るぐらいで返せたんだから、少しは信頼も戻ったでしょ、知らんけど。
そしてATMから出て来たご利用明細票を受け取って……思い出した。
――今まで振り込んだ家賃分のご利用明細票、撮り忘れてるじゃん!
そもそもこの明細票を見て、この分も戻ってきたらもっと無双出来るのにな~の気持ちから書いたレポートで発覚した事だったのに、なんてお馬鹿なんだろう。
まぁいい、今気付いたという事は、一生気付かない事よりはもちろん、明日気付くよりもマシだから。
そして気付いた事はなる早で有言実行しないと、それもまたお馬鹿という事だ。
帰り道のコンビニで美味しそうなおつまみをいくつか買ってから帰宅し、早速、今まで振り込んだ分の明細票4枚を集めてまとめて撮ると……当たり前だけど今までの最高額、11万9千円を叩き出した!
「すげーーーっ!」
思わず隣からクレームが来そうな大声を出してしまったが赦して欲しい。
これで、家賃の残額は現在15万1千円だから、今日のこれからの儲け額によっては明日、または今日の夕方にでも本当に完済出来てしまいそうだ。
だがそう思うと、途端につまらなくなってしまった。
なんといえばいいのか……例えば、私はRPGで新しい村に着いても、すぐに装備を買わない人間である。
そのまま次のダンジョンに行って、あまりにもモンスターとの強さに差があってまともに進めないようなら初めて、村に戻って装備を整えて出直す。
それは、敵とのギリギリの駆け引きを楽しみたいから。
強さの差でいえば、パーティ6:モンスター4ぐらいが丁度良いと思っている。
それを最初から最強装備を手に入れたり、アイテムで急激にレベルを上げて、パーティ9:モンスター1の状態で挑んでもドキドキ感が全くない……つまらないと感じてしまうのだ。
だからチャンスをいきなり最大限利用せずに毎日コツコツ借金を返していたのも、借金やデブというモンスターをちょっとずつ倒してストーリーを進めて行く“ゲーム”を楽しんでいたから。
もちろん現実はゲームじゃないから、借金なんていうマイナス要素はチャンスさえあれば一気に完済してしまうに越したことはないのだけど……今でも、それ以上の、例えば世界一のお金持ちになりたいとかは全く思わないのだ。
5千兆円欲しい、は有名なネットミームだから口癖になっているだけで、本当に貰ったらすごくつまらないだろうなとしか思えない。
推しのグッズをコンプして、舞台の大千穐楽をS席で観れて、コラボカフェや聖地巡礼も行けて……グッズ収納のためにもっと広い部屋に引っ越して……ほら、これ以上の贅沢が浮かばないの、長年の貧乏生活で洗脳されている証拠だよ。
まぁいい、もう一回現実を見て。
現実はゲームじゃないって言い聞かせて。
昨日、増えた家賃分を上回った所で気持ちにストップがかかって途中でやめてしまった明細書関連の整理を再開する。
水道代4,224円、インターネット&ケーブルテレビ3か月分22,887円、まとめて支払いが使えていたころのスマホ代16,211円……よしっ、これで43,322円!
さっきバックしたほやほやの家賃と合わせて162,322円、11,322円もお釣りが来ちゃう!
……これ、本当に今までの迷惑料って事で、多く入金しようかな。
まぁどうせその分、次回分から差し引かれて引き落とされるんだろうけど。
ともあれこれで正真正銘、信頼は戻った筈。
振込に行くのは明日だけどね。
……ああ、なんかそう思うと、やっぱりつまらなくなるな。
今度はゲームをクリアした後の虚無感みたいな感じ。
いやいや、だからって「もうやめます」は勿体な過ぎる。
というかいつテストが終わるかも分からないんだから、急にやめても悔いが無いようにガッポリ稼いでからにしなきゃ。
モチベーションの方は、せめて……そうだな……「Fin.」じゃなく「Chapter1 Clear!!」とでもテロップを入れておこう。
Chapter2はもっと面白い方法でデブを苦しめられないか考えてみようかな。
例えば……と、お風呂掃除を始めて早速そのネタを発見し、出来るかどうかレポートを送ってみた。
→つづく
実は一か所だけ、TALES版とは変えています。
ただの誤字の修正じゃなく、この後、展開を分岐させようと思っているので。
どちらのバージョンも楽しんで頂ければ幸いです。




