第6話 お祭りで確変入りました!
今日はお祭り。
手持ちのお金は2万円に満たないけど、例のアプリがあれば……。
そして、楽しい休日に水を差す不穏な影……?
今日は地元のお祭りにやって来た。
アラームもかけなかったのに休日にしては早起きをして、早速、出かける準備を始める。
さくさくと着替え始めて……いきなりちょっとした問題にぶつかった。
――しまった、ヒートテックの長袖インナー、1枚しかないから洗ったら夏用のカットソーインナーしかないじゃん。
今日のところはそこまで気温も低くないと思うからこれでも良いけど、これは洗い替え用にあと2枚は買っておこう。
そして脱いだルームウェアを昨日の服やタオル類と一緒に洗濯機に突っ込み、洗剤を取り出す時にふと、洗濯機の取説が目に留まって、思った。
――今時、取説なんて洗濯機本体にQRコードが付いてるし、紙媒体のこれも要らないよな……。
そう思ってゴミ活アプリを起動させたが、また別の事が頭をよぎって手が止まる。
――そういえばこれ、ペイ●ィ分割払いで買って、まだ支払いが一回分残っているんだった。
普通にクレカを持てない身として重宝していたが、こういう弊害があるとは……。
いや、普通の人間はこんな弊害に遭う事自体が有り得ないのだが。
これも良いレポートのネタになるなと、下書き保存していそいそと出かける。
平日の午前中は人が少なくて歩きやすい。
まずは日本酒三種飲み比べセット1,500円から。
それから、昨日のうちに食べたいものをリストアップしてみたけど、全部食べきれる自信が無いから、ここは値段が高い順に食べていこう。
焼きあわびとイチボ牛ステーキがそれぞれ2,000円、エゾ鹿ステーキ1,900円、ジャンボ炙りホタテうにのせ1,500円……どれだけ食べても一瞬でお金が戻って来るから、確変入って実質タダである。
そしてズワイガニの甲羅焼きを買って食べながら歩いていると……。
「げ、デブ……」
なんとデブとばったり出くわして、目が合ってしまったのだ。
なんで休日にまで嫌いな顔を見なくちゃいけないのか。
話し掛けて来たらやだな……と思っていると、デブは気まずそうに顔を背けて、早歩きでどこかに行ってしまった。
――いやお前が逃げる立場かーい!
それはそれで腹立つが、取り敢えず最悪の休日……デブと祭を練り歩くパターンは避けられて良かった。
それに、“これ”が出来なくなったら困るもんね……と、身を食べ終わってミソも日本酒と一緒に飲み干したズワイガニの甲羅をゴミ活アプリで撮ると、手元に1,200円が戻って来た。
これ一食で今までの一日の生活費みたいなものだからね。
その後も真たちの天ぷらとか、牛タン炙り寿司とか、結局夕方まで食べて飲んで総額で2万円ちょっとになった。
もっとすると思っていたけれど、意外と安かったな……という、感覚のバグ。
帰りは、普段あまり寄らない郵便局に寄って、昨日の儲け分からキリ良く1万7千円を振り込む。
残り17万8千円か……まだまだゴールは遠いなと思う反面、その約1割を今日振り込めたのはやっぱりデカい。
帰りは宣言通りヒートテックを2枚と、ついでに切らしていたシャンプーも買って行く。
シャンプーも昨日の化粧水同様、今まで200円レベルだったからワンランクアップの300円台のものにした。
最後に、これだけ食べたのだから晩御飯は要らないかなと思ったのだが、沢山歩いたからか家に着くころには小腹が減ってしまったので、コンビニでレンチンラーメンを買って帰宅した。
お風呂に入ってラーメンを食べ終え、空になった古いシャンプーとメンマの入ったラーメンの器をゴミ活アプリでまとめて撮ると811円になった。
それから、今日買ったインナーの袋やタグと、どうせならと今日着て行ったほつれが目立つようになっていた古い夏用インナーとブラジャー2枚も洗濯せずに一旦雑巾にしてコンロ周りを軽く拭いてからまとめて撮ると……。
「え、うそ!?」
1万7千円……今日買ったインナーがそれぞれ2千円だったのが、古いインナーは5千円、ブラがそれぞれ4千円だったらしい。
昔は下着にちゃんとお金を掛けていたのか……いつから落ちてったのかな……と、ちょっとだけ自責の気持ちがよぎるが、その分、今はこの魔法のアプリのお陰でその時以上の生活が約束されたんだと自信にもなる。
一日の締めくくりとして集める翌日のゴミ……燃えるごみも、ティッシュと割りばし以外は殆ど無いからだいぶ家の中が綺麗になったような感じがある。
最後にレポートだが、下書き保存しておいたメモを清書する。
『ペ●ディ分割払いで買った物は、支払いがまだ残っていても全額返ってきますか?』
あまり細かくパターンを書かなくても、これだけで結局何が言いたいかは伝わるだろう。
さて……明日、デブがどんなリアクションをするか楽しみだな~。
→つづく
デブ母「アンタなんでゴミ持って帰って来たの!?」
デブ「私じゃない!」
デブ母「アンタ以外いないでしょ!」
……なんて怒られてるんだろうな~。
次回はまた日常に戻りますが、そんな母親に怒られたであろうデブのリアクションにご注目。




