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ゴミ活  作者: ミカ


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10/11

第10話 課金あっての神アプデだよ

大型アプデ、入ります!

「よっしゃあ~っ! ミッションコンプリート!」


 と、叫ばずに口の中だけでこっそりつぶやき、郵便局のATMでご利用明細票を受け取った。

 昨日の儲けのうち16万円を振り込んで無事、家賃は完済!

 次回から9千円引かれる計算になる。

 これでもう着信拒否はしなくて良いな。


 そして今日は、家賃を返し終わるまではと我慢していた事を一気に解禁する事にした。

 本当だったらこのゴミ活アプリを使い始めてからすぐ解禁でも良かったんだけど、そこはそれ、私みたいなクズなりにもケジメってものはあるのだ。


 まず、何はさておき課金だ!

 現行ジャンルのゲームの周年記念衣装を、まだ最推し2人分の2着しか手に入れていないのはあまりにも哀しい。

 前にざっくり計算したら大体5万5千円でコンプ出来た筈だから、毎日1万円ずつコツコツ課金して集めていこう。

 ……ほらね、こういう所でも、一気に6万円課金しようとか思わないんだよ私って人間は。


 あと、その推しのぬいぐるみがコンビニで売っている筈なんだけど、とっくに狩り尽くされた後みたい。

 でも送料はかかるだろうけどオンラインストアにはまだ残っているかも知れないから、帰ったら見てみよう。


 という訳でコンビニでは1万円分のプリペイドカードだけを買って帰宅した。


  * * *


 家に着くとまたあの糸目の男の靴があったので、今度はこちらから先手を打った。


「こんにちはー! 来るの早くないですか?」


「こんにちは。いえいえ、とても面白い試みだと思ったもので、居ても立ってもいられなくて」


「これ、良かったら食べて下さい」


「お気遣い有難く」


 こうなる事を見越して、さっきコンビニでショコラスフレとジュースを買ってきたのだ。

 コタツの向かいに座り、私もジュースのキャップを開ける。


「さて……『髪の毛』ねぇ……。いや~、面白い視点ですよね! 思い付きもしませんでした! やっぱりテスターを頼んで良かったです」


「恐れ入ります。で……どうなんでしょ? 出来そうですか?」


 私が昨日お風呂掃除をして思い付いた事。

 それは、『髪の毛を染めた分も対象になるのか?』という事だった。

 要は、髪の毛に付着したヘアカラー剤の分のお金も戻って来るのかという事だ。

 それプラス……。


「結論から言って、ヘアカラー剤に関しては対象になります。髪の毛を撮って、T橋さんのゴミ箱に移動して、カラー剤を買った時のお金が戻ってきます。美容院に行った時も同じですね。で……」


 ここまでは予想通り。


「髪の毛の傷み、白髪、ハゲ……これね、スタッフの間でも議論したんですけどね……」


「あー、やっぱり畑が違うから無理ですよねぇ」


「課金で行こうという事になりました!」


「マジすか!?」


 出来るんかーい!


 私がダメ元で提案した事とはつまり、髪の毛が受けた“ダメージ”も押し付けられないかという事だった。

 脱色してボロボロになったキューティクルとか、白髪染めで黒くなった分相手には白髪が増えるとか、円形脱毛症の薬を塗れば相手がハゲるとか……。

 そんな風に例が並べられるのも、デブのせいで受けたストレスで白髪が増えて円形ハゲまで出来た恨みからなのだが。


「ただ、こちらでテストプレイをしていないので、今、初めて試してみる事になります。上手くいかないかも知れません。それでも良いですか?」


「もちろんですよ。そのためのテスターでしょ?」


 頼もしいです、という微笑みに応えるように、私は床に落ちていた髪の毛を3本ほど拾って、広げたティッシュの上に置いた。


「課金のテストもしたいので、実際に料金を引いても良いですか?」


「額によりますけど、おいくら?」


「あくまでテストですからね~。1回につき1円でどうでしょう」


 声を出して笑ってしまった。

 そんなもん、オーケーしない理由が無い。


 アプリのバージョンをアップデートすると「健康被害モード」という項目が増えていて、そのネーミングにも笑ってしまった。

 そこからカメラを開いて髪の毛を撮ると、714円が戻って来た。

 利用履歴を見てみると、「ヘアカラー ¥715」の直後に「ダメージ ¥-1」とある。

 糸目の男は満足そうにまた更に目を細め、自分のタブレットを見せてくれた。


「T橋さん、元々髪の毛が汚い方なので傷み具合は分かりにくいですが、ここ、白髪が増えたの分かります?」


「あー、ほんとだぁ! やば」


 ただでさえ汚い髪が益々汚くなって、ざまぁみろしかない。

 あんたのせいで増えた白髪なんだからね、こうなるのは当然なんだよ。


「他にも怪我、虫歯、口内炎……など、思い付く限りは組み込んでみたつもりですが、それら全て上手くいくかは分からないので、引き続き、テストの方お願いします。増やして欲しい項目も遠慮なく言って下さいね」


「充分すぎますよ、ありがとうございます!」


 元気にお礼を言うと男も非常に満足そうに深々と頭を下げて、ちゃっかりスフレとジュースを平らげてから帰って行った。

 もちろん、そのゴミは持ち帰る事無く、コタツの上に置いたまま。


                                            →つづく

次回はこの新機能をふんだんに使った嫌がらせが始まりまーす!

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