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第二章 メモリーデッキと日常の支援
私の住まいは、軌道都市の小さなユニット。プライベートホログラムを間仕切りとして使い、わずか12平方メートルの空間に必要最低限の家具が収められていた。中央には端末型の「ケアステーション」が置かれ、投影されるUI上で祖母のバイタルデータがリアルタイムに表示される。
朝になると自動調理ポッドが起動し、栄養バランス最適化されたオムレツがスライド式トレイに現れた。私は祖母の前に取り分けると、ひと口ごとに嚥下センサーの反応をチェックしながら声をかけた。「今日も無重力散歩に行こうか」──言葉を補完する補助アルゴリズムが、祖母の脳内に心地よい安心感を送る。
薬もまたナノカプセル化され、口内で徐々に溶ける仕様だ。祖母は不安げに眉間にシワを寄せたが、私がケアステーションのホログラムで庭の風景を映すと、かすかに微笑んだ。私はそっと頷き、次の記憶補強パッチを用意した。