表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーラー服と雪女 第5巻 「証和の雪子」  作者: サナダムシオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第肆幕 憑依

「ちなみに、専攻の教科は何ですか?」

 高校生の雪子が尋ねると、大学生の雪子が答える。


「美術科よ。専門分野は絵画で油彩。どう?意外でしょ。」

「それは…確かに。」

「できるだけ、今まで使ってこなかった脳細胞の部分を刺激したくてね。」


「で、実際どんな感じなんですか?」

「随分いいわよ。脳がリフレッシュされる感じ。あなたも体験してみる?」

「それは…もちろんですけど…。いいんですか?」


「アナタ、見たところ精神体のようだから、私に憑依する必要があるわね?」

「…はい。」

「いいわよ。どうぞ。前から入る?それとも背中から?」


「ためらわないんですね?」

「だってアナタは私なんでしょ?もし仮ににうっかり融合してしまっても、もともとの天才が、強化されるってことじゃない?」

「そんな風に言ってもらえると気が楽になります。」


「じゃあ、どうぞ。誰も見ていない今のうちに。」

 そう言うと大学生の彼女は、座ったまま背中を向けた。

 高校生の雪子は、恐る恐るその背中に手を掛ける。


 彼女は手から少しずつ背中に入って行って、最後はすっかり大学生の中に消えてしまった。


 ほどなくして、今や「二人で一人の雪子」になったその大学生は、何食わぬ顔で図書館を出て行った。


 彼女はすぐその足で、美術棟の2階の油絵実習室までやって来ると、自分の座席に向かう。

 今日の午前中の授業は休講だったので、カマイユ技法で描きかけの油絵を、自主的に進めることにしていたのだった。


「何だか不思議な感覚よね。まるで❝魂の二人羽織❞って言うか。」

 服を汚さないようにエプロンを着ながら、独り言を言う雪子。

(そうですね。)

 心の中で答えるもう一人の雪子。


「あら、早かったのね。もう調べ物は終わったの?」

 突然後ろの入り口から声を掛けられる。

 雪子が振り返ると、そこに懐かしい顔があった。


 それは小学校からの友人、村田京子だった。

 今日もボブカットのヘアスタイルに、黄色いワンピースを着ている。


「うん。カマイユ技法について、少し確認したいことがあっただけだから。」

 そう答える雪子。

(へえ、そうなんだ。)

 それに対する心の中の雪子の感想。


 京子は部屋に入ると、すぐに座席に着く。

 彼女の座席は雪子の隣だった。

 カセットウォークマンのスイッチを入れると、ヘッドフォンをつけた。

 そしてエプロンを着ると、早速筆を取り作品の続きを描き始める。


 二人は同じモチーフを課題にして静物画を描いていた。

 小さな切り株と緑のワインボトルと古びた黒いブーツ。

 その組み合わせと配置は二人で考えたものだった。


 ちなみにカマイユ技法とは、古来からの油絵の手法で、簡単に言うとグリザイユ技法を茶色系の色で行うものである。

 そしてグリザイユ技法とは、まず白・黒・灰色のみで絵を描き、その上から物体の固有色を乗せていくものである。


(一つ確認しておきたいことが…。)心の中から尋ねる中の雪子。

「何かな?」小声で答える外の雪子。


(この時空では、稲武のクマ事件で京子さんと協力してますか?)

「うん、うん。そんなことあったね。懐かしい。」

(じゃあ、お互いのチカラについては承知しているんですね?)

「そうよ。だから安心して。」

(了解です。作品制作の邪魔にならないように、しばらく静かにしてますね。)


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ