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セーラー服と雪女 第5巻 「証和の雪子」  作者: サナダムシオ


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3/5

第参幕 変節

「何か事情があるみたいね?とりあえずこっちへいらっしゃい。」

 大学生の雪子に案内されるままに、高校生の雪子は二階の自習室に入った。

 奥の座席に座ると、大学生の雪子が小声で話し始める。


「この時間の自習室はほとんど誰も来ないのよ。とりあえずアナタも座って…は無理かしらね?」 

 別の時間軸とはいえ、さすが未来の私だ。察しがいい。

 そんなことを思いながら、高校生の雪子が話を切り出す。


「実はもともと持っていたタイムリープ能力を、装置の力を使って増幅して、別の並行宇宙の調査を始めたのです。」

「ああ、じゃあアナタは、時間軸上の斜め後ろの私ってことね?」

「理解が早くて助かります。」

 相手が自分の同位体とはいえ、年上だからつい敬語になってしまう。


「まずは、ここがいつのどこで、貴女は何歳か、などを教えていただけますか?」

「お安い御用よ。」

 ああ、素敵だ。話が早い。


「私は真田雪子。大学2年生。誕生日がまだだから19歳だけど。」

「それからここは愛知教育大学の図書館。」

「今は証和59年5月8日の火曜日。西暦の方が良ければ1984年ね。」

「時刻は朝10時を回ったところかしら。」


 大学生の彼女が小声で一気に説明した。

 高校生の雪子は少なからず驚いた。

「えっ、東大とか京大とか、せめて名古屋大学とかじゃないんですか?」

「まあ、そういうリアクションになるわよね?」


 クスクス笑う大学生。

 高校生の雪子は「ハトが豆鉄砲を食らった」ような表情をしていたに違いない。


「私は…いえ貴女も、物理学を極めるはずなのに…いったいどういう…?」

 尋ねる高校生に答える大学生。

「実は私ね、ちょっと疲れてしまったの。」

「えっ。」


「私は自分の能力の許す限り、色々な過去や未来に行ってみたのよ。」

「でも、結局変えられないものがあるってことに、気づいてしまったのよ。」

「イチ個人のチカラには限界があるの。」

「そう…なんですか。」


「だからね。私はまず、人間について研究することにしたのよ。」

「それで教育大学に?」

「そう。ここで心理学や教育学などを学んで、卒業したら中学校の教壇に立つつもりよ。」

「…中学校の教師。」

「それは、思春期を迎えた人間が最も激しく変化をする時期。興味深いでしょ?」


 雪子は、4年後の自分が「そうなる可能性もありうることだ」と思った。


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