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セーラー服と雪女 第5巻 「証和の雪子」  作者: サナダムシオ


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2/5

第弐幕 図書館

 ゆっくりとまぶたを開くと、そこはどうやら昼間の図書館のようだった。

 雪子の予想では、いきなりその場の自分の同位体に憑依してしまうのか、まずは精神体としてその場に漂うのか、そのどちらかであった。


 恐る恐る自分の身体に視線を落として見る。

 見慣れたセーラー服から伸びる手足がそこにあった。

 この姿は、スタート時に実験室に居た時のままだ。


 雪子は「戦闘服」として、自分の高校の制服を選んでいた。

 その理由は、第一に精神体として自分がイメージしやすいモノであるから。

 第二に、このセーラー服のデザインはスタンダードな物だから、多分いつどこに現れても、その場に馴染む汎用性があると思ったからである。

「冠婚葬祭もなんとかなるしね。」なんて思っていたのだ。


 精神体として漂う場合は、注意が必要である。

 相手から雪子が視認できるし、お互いの会話も成立する。

 しかし、その場の物に触れられないし、相手も雪子に触れない。


 そして、精神の集中力を維持しておかないと、姿が薄く透けてしまうのだ。

 雪子は、試しにさりげなく近くの本棚に手を近づけてみる。

 やはり手ごたえは無く、自分の手が空を切る。


 つまり今は、「幽霊」状態なのである。

「急いで自分の同位体を探さなくっちゃ。」

 雪子はつい小声で独り言を言ってしまう。


 雪子の同位体はすぐに見つかった。

 予想では近くに居るはずだったので、これは計算どおりである。

「彼女」は机に向かって洋書を開き、熱心に調べ物をしているようだった。


 髪型はセミロングの無造作ヘア。

 ブルーのワンピースに、薄手の白いカーディガンを羽織っている。

 この時空の季節は春だろうか?

 室内だからイマイチはっきりしなかった。

 

 雪子は彼女にゆっくりと近づき、なるべく小さな声で話しかけた。

「こんにちは。」

 彼女は、その声に反応して視線を上げた。

「はい。どなたかしら。あら、どうしてこんなところにいるの?」


 意外な返答だった。

 そう言われて何となく周りを見渡すと、あたりに居るのはみんな若者だったが、誰一人制服を着ている者は居なかった。


 雪子は即座に事態を理解した。

 ここは恐らくどこかの「大学の図書館内」だ。

 セーラー服の自分は悪目立ちしている。


 万能のはずの「戦闘服」が裏目に出てしまった。

 雪子は心の中で小さく舌打ちした。

挿絵(By みてみん)

 

 

 

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