メキシコの床屋さんのはなし。
メキシコでの寮生活も一か月ぐらいが経ったころ
長く伸びてた髪の毛を切りに行くことになった
スペイン語(メキシコでの公用語)で髪の毛は
カベジェラ
という。ルチャリブレに負けたわけじゃないが、先輩方に連れられた私のカベジェラをティヘラ(ハサミ)で切ってくれたのは寮の近所にあった床屋さんだった
入り口が開けっ放しで、実に庶民的なお店
日本によくあるちょい懐かしい感じの美容室に近い。白っぽい照明のお店に入って先輩が何やらスペイン語で店のおばちゃんに話している
数秒でどうやら話がまとまったらしく、床屋さん特有の椅子に腰かけるように言われて座る。鏡に映る私の顔は少し不安げだけど結構ワクワクしている
と、そのままさっきのおばちゃんがハサミを手に近づいてきた
ああ、この人が切るんだ
そう思っていると早速チョッキリ。否応なしの先制攻撃であった
軽快にティヘラを走らせるおばちゃん。南国の女性らしく大きく胸元が開いた服を着ている。おばちゃんではある、ものの、どうしても、でも、胸元に眼は行く
少しくたびれた褐色の素肌。南国の女性らしくおばちゃんくらいの年齢になるとほぼ例外なくふくよかになってくる。なので胸も(お腹もケツも)大きくせり出している
そこにパラパラと生える濃い胸毛
胸毛ぇ!?
驚いたけど頭を動かすとマジモンのヘッドシザースを食らってチョッキリいってしまうのでグッと我慢
でもまたおばちゃんの胸元が近づくと、胸毛も近づく
こんな理由で女性の胸元が気になって仕方が無くなったことなんて後にも先にもこの時だけだ。というか、それでも女性の胸を凝視していることに変わりはないわけで……ウンコが漏れそうだろうが伊勢湾岸道を走ってたら後ろから治安の悪いナンバープレートを光らせた黒いシャコタンのプリウスに煽られていようが制限速度違反をしたらコッチが捕まるのといっしょ(それはちょっと違うんじゃねえか佐野くん)で見ちゃいけないとは思うのだが、それでもやっぱり気になる胸毛
私は男の胸毛は苦手だ
自分の胸毛も嫌だ
でも、女性の胸毛は想定外というか好き嫌いの基準が出来てなかった
昔付き合ってた女の子で産毛の濃い子は居たけど…今回は赤の他人で揉んだり吸ったりするわけでもねえし…どうしたもんかと思ってたら完成していた
腕前は確かなおばちゃんであった
何しろ万事いい加減、こっちの常識からすると何をしでかすかわからないアミーゴたち
髪型もとんでもないことになるのではと不安半分期待半分だったが、爽やかにカットしてもらえて安心半分
残念半分でした