ペソ硬貨
なんとなく部屋のなかを整理してたらペソ硬貨が出てきた。
5ペソと10ペソと、あとペセタっていうペソより細かいやつ。
日本で言うと銭ってことになるのかな、アメリカのセントとか。
でこれがチャラチャラ貯まっちゃってさ。お金が貯まってめんどくさがってるのも罰当たりなハナシだけどしょーがない。
そもそもお釣りをきちんと渡してくれるだけでも有難い話で、屋台のオバチャンだろうとバスの運転手だろうと
カンビオ・ポル・ファボール!
(お釣りくれ!)
ってきちんと言わないと知らん顔されたりする。でカンビオ・ポル・ファボール! をやったところでコレだ。そらキャッシュレス、電子マネーの時代も来るわな。
今日出てきたのは5ペソ硬貨だった。たぶん、いちばんお釣りとかでもらってたんだと思う。
寮の食事の準備をするのに買い出しに行くのは、近所の市場かメガマートでさ。
メルカドはmarketのスペイン語でmercadoという。
これは徒歩2分ぐらいのとこにあった。
でメガマートは寮を左に出てずーっと歩いていくと大通りに突き当たるんだけど、その大通りの歩道橋のたもとんとこにバス停があってさ。
ハチだったかバッタのマークを付けてるバスに乗って暫く行くと見えてくる。
バスっても日本の路線バスみたいのが来るわけじゃなくて、マイクロバスとかハイエースとかまちまちだ。タクシーみたいに個人事業主なのか毎回乗るたびに車種が違ってた。だから同じマークを目印にして乗るんだろう。
それぞれの路線を示すマークと、どんな車のどんな運転席にも飾ってあったマリア様が目印だ。
で、このバスの運賃が寮の最寄りのバス停からメガマートまでで5ペソだった。
乗り込むときに
メガマート・ポル・ファボール!
と元気よく告げると
シンコ・ペソス(5ペソだよ)
と言うんで(返事はこの限りじゃないけど)チャールズ・ブロンソン似の運転手に直接運賃を手渡しにする。この時に10ペソ硬貨とかを出しちゃうとお釣りをくれないことが、まあまあある。
カンビオ・ポル・ファボール!
が炸裂するというわけだ。
はいよ、と普通にくれるときもあれば、アツい舌打ちがオマケでついてくる時もある。
チャールズ・ブロンソンの方は温厚な人物だったのを書いてて思い出した。
なもんで予め5ペソを用意してバスを待ってたんだけど、暑いじゃんあの国わ。
でバス停の近くの歩道橋の影からスーっと出てくるんだよ。
BONICEのオバチャン。ボンアイスって読む……と思う。
紫っぽいブルーにピンクのツートンっていうブレット・ハートみたいな色合いの長袖長ズボンで肩からクーラーボックスを下げてて、この中にアイスキャンディーがギッシリ入ってる。
ロッテの「ギュギュっと」を二回りぐらいデカくしたやつで、お値段どれでもおひとつ2ペソ。
ジリジリジリジリ暑い。バスは来ない。定刻どころか時刻表すらない。
時間通りに来るバスなんてものがそもそもない。
ジリジリジリジリ暑い。バスは来ない。まだ来ない。
そこにアイスを下げたオバチャンがツインビーの救急車よろしくやってくる。
やでうでじや…と駆け寄ってアイスを買うわな。
はい3ペソのお釣り。
で結局このあとバスに乗るのにまた10ペソ出して5ペソのカンビオ・ポル・ファボール! をやる。
こうして小銭が貯まっちゃったまま帰国したんだけど、銀行に行ったらお札はいいけど小銭は両替してもらえなかったんだ。外貨の両替なんて後にも先にも今のところあの時だけだったけど、普通の窓口じゃなく銀行の2階に通されてさ。そこで日本円に替えて貰ったっけな。
しかしまあこのBONICEの美味いこと。味が濃いうえあの暑さ、あじあじひはひは、となっているところに(なんか今日は椎名誠さんふうの表現が多いな)キンキンに冷えたアイスだぞ?
そりゃ食うって。
味も色々選べるんだ。
ちょっと面白いのは日本だとリンゴ味って黄色とかじゃん? メキシコのリンゴ味は黄緑色なんだよね。青リンゴの色なのかしら。スペイン語ではマンサナという。メロンだと思ってパクっと行くとちょっと驚くぞ。
黄色はレモンとかマンゴーが多いかな。
あと定番で言えばオレンジ(ナランハ)とブドウ(ウバ)もある。私はブドウ味がお気に入りだったんだけどそこはメキシコのオバチャン。
たまに
「ウバ・ポル・ファボール!」
と今にも干からびて死にそうなナメクジみたいな顔をしたこの日本人肥満児がカタコトのスペイン語でお願いしても
「今日はマンゴーしかない!」
と言われ、カパっと開けたクーラーボックスにはホントにマンゴー味がギッシリ、なんてこともあった。
マンゴー味も美味かったけどさ。しかしまあどういう仕入れをしたらそうなるんだよ!?
んなことしてるから余った小銭が今も手元に残ってる。




