表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

4話



「この方はな、草の国の姫、直属護衛騎士でその美しい容姿はモテモテなのに、恋愛と忠誠心を履き違え姫に近づく虫は容赦しないことから『鈍愛SM』と呼ばれているんだ! 草の国では有名で、知らないやつはいない。ぶたれたい奴も大勢いる。俺も……その一人だ♡」


 パチン。片目をウインクしながら要の方を見上げるグラサンのおっさん。底の悪いドMストーカー。


「ふー…ん。なんか、さらっと酷い事言われてそうだけど。そういえばお前さ、ギルドの間でコードネームとかまだ決めてなかったよな?」


「決まっていないし。恋愛と忠誠心を履き違えてなどいない」


 誰かに求められることは、きっと……良い事なんだろう。俺は嫌だけど。しかし、いい事を聞いたな。

 俺の考えを見抜いたのだろう。要が心底嫌そうな顔をするが、構わず天使スマイルして。


「じゃ。『鈍愛SM』でいこうか」


「お前、ふざけた事を言うなっ!」


 その可愛らしい顔を、今すぐボコボコにして喋れなくしてやろう。鞭を握る手に力がこもり、グラサン男が短く喘ぎながら腰を反らした。だが、要はにとっては、そんなことどうでもよく、渉しか見えていない。

 このままでは不味い。一歩踏み出して近付こうとしている。


「ま、待てよ! 『近・接・効・果!』 お前、『近接効果』のこと忘れてるだろ?」


 必死になって止める。額には冷や汗がぽつぽつと込み上げる。


 『近接効果』とは。近接効果が起こる時は2つのパターンがある。


 1つ、【一定の距離内に相性の良い属性が存在すると、恋愛に近い胸のトキメキと、意志とは違ったとしても、体が思うように動かなくなる】


 2つ、【一定の距離内に相性の悪い属性が存在すると嫌悪感を抱きやすく、体が意志を伴い喧嘩をする】


 但し、一定の距離とはそれぞれの魔力の量により決まり、一般的には一歩程度である。というものだ。

 俺はもう。要とイチャイチャするのはごめんだ。


――以前。要と『はじめまして』で会ったとき、授業で文字や言葉だけで知ってはいたものの、初めて『近接効果』というものを体験した。それは想像以上で痛く苦々しい。


 離れたくても離れられない体の勝手、思い出しただけでも背筋が凍る。もう、雑草とだけイチャイチャしていたいと思う。

 そのせいで青葉も、要の大切な姫さんも攫われたんだと言っても過言ではないのだから。

 要も同じ事を思い出したのだろう。クッと歯を食いしばりながらも、顔が半ば青白くなっていた。

 

「わかったら、さっさとそこ、どいてくれない?」

「あ、ああー…」


 要が扉から2、3歩。後方に退くと、反っていたグラサンのおっさんが気持ち良さそうに声を上げ、地面にぶっ倒れそうになる。

 その先に見つけた。


「ああ! おまっ……俺の雑草がっ!」


プゥゥウウウウウウ


「くさぁ〜…い♡ 要様の屁ありがたいですぅ」


 グラサンの男と要が茶色い煙に巻かれる。グワッと鞭を手繰り寄せると胸ぐらを掴んで犬歯をむき出した。


「お前ー…いい加減にしろっ! 俺の屁じゃないっ!」

「もっと……♡ もっとやって……ハァハァ」


 決してキモいと思ったからではなく、少しもないといえば嘘だが。渉は硬直ぜずにはいられなかった。

 この音は、べどべどん草の花弁が咲いたとき。蕾のときに貯めている中のガス。それが放出される音に似ていた。つまり。

 俺の愛する雑草が……背中で潰された……だと……?!

 渉は声にならない絶叫をあげた。

よろしければフォロー、いいね、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ