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3話


 朝一。俺は雑草のために起き、雑草の元へ向かう。

 なんて清々しい寝起きなんだ。

 少し前だったか。寝起きが充実しだしたのは。


――一番最初に映り込むのは柔らかそうな茶髪。短パンから見える弾力のありそうな太モモ。すっぽりと手におさまりそうな胸。小さな寝息をたてながら気持ちよさそうな顔。


――身動きが取れず、全体重を真上からかけてくるそいつを揺すり起こすと『んんんんー…うへへ。やっぱり渉兄は可愛いお顔だねぇ……』呆けて上手く回らない舌、目を擦りながら視界が開けてくると、腕を伸ばしてきて俺の頬を包み込む。それらが、ないんだ。


 最高だろ。


 そこから『恋しい雑草を一刻も早く身に着けたい渉』と『残念な雑草を身に着けていない。可愛い渉』を見たい青波との闘いが始まるー…ことも今はない。

 訳あって暫く会えていないけど、心配はあんまりしてないし。近くに美少女がいるはずだから問題もないだろ。

 でもさ。一応、妹みたいなものだし、安否確認くらいはしたいんだよね。

 寝室から一階に降りると、ジケルのいないバーの伽藍堂が出掛けたことを告げていた。

 昨日の夜にバーで飲んだオレンジ系ジュースは美味しかったな。

 ジケルの職業はバーテンダーだ。昼間はちんけなオンボロ店だと思っていた。が、夜になると一変。所々大きなボロ穴から灯りが漏れ客を呼び込む。暗闇に光る自店アピールといったところだ。

 外の音は穴のない家より比較的聞こえやすく、鳥だろうか。『イヤァンイヤァン』と珍しいさえずりが聞こえてきた。

 さぁ。今日も水に感謝の舞を踊るぞ!

 外に繋がる木の扉を開けると、瞳に映り込むは愛しき雑草ー…のハズだったのに。

 映り込んだのはロングウルフをハーフに結んだ黄金髪。白のスーツに金属の装飾を所々付けた護衛正装。顔のチャームポイント、細い眉がキリッ。

 黙っている今。この瞬間だからこそイケメンが店の前に立っていた。渉より身長が高く威圧感がある。


「なんだ。カナメか」

「なんだとはなんだ」


 お互い仏頂面になりながら話し出す。

 今到着したらしいが、休ませてやるものか。


「もう、任務は始まってるー…て、お前さ。鳥とか飼ってたっけ?」


 扉を開けてから、外に近づくと聞こえてきたさえずりが大きくなるのは当たり前だ。でもさ、なんというか、デカ過ぎた……。

『イヤァンイヤァン』から『いやぁああん! いやぁああん!』って感じ。


 要を見上げていた渉がさえずりのする方。視線を徐々に足元に向けると。片手に濃緑で無数の棘がある、持ちて部分に赤い薔薇がついたムチ『SMどムチ』を握っていた。さらに視線を下に向けると。

 俺はバッ。直ぐに要を問い詰める目で、指をさす。口から何を発しようとしていたか忘れて口をパクパクさせる。

 ああ。なんだ、これのことか。という目で要が。


「拾った」


 拾ったってー…それ、鳥じゃなくて人間じゃん。

 

『イヤァンイヤァン』の正体。それは。


「いやぁああん、いやぁああん。もっと……もっとやって下さい『鈍愛SM』様ぁ」


 上半身裸で、腹の腹筋がいくつも割れてるような黒サングラスをかけた坊主の男。『SMどムチ』に両手と胴体を巻かれ、火照らせた頬で尻をモジモジさせている奴だった。


「お前にそんな趣味があるなんてー…気づけなくてごめんな。えー…と。『どんまいSM』」

「違う! 『鈍・愛・S・M』だ! あと、趣味じゃない」



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