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1話 コードネーム『 雑草 』



 俺さ。大体疎まれてきたんだよね。

 無能なんだってさ。馬鹿で、最弱で、泣き虫で、見ているだけで有害でしかないだって。何も出来ない世間のゴミらしい。

 そんで、いつだったかさ、同級生に囲まれながら言われたんだ。


『お前は雑草みたいに、踏み潰される人生がお似合いなんだよ』


 その時からだ。俺のあだ名が雑草になったのは。

 俺さ、何かすげぇ苦しくなって、なぜかわかんねぇけど、すげぇ辛くてボロボロ涙出てきて。服がビショビショに濡れるまで泣いて。

 皆が俺を1人置いて校庭から去るのを、その場に崩れ落ちながら見てたんだ。

 ぼやけた視界、不意に緑色の影が映って。戻ってきてくれたんだって、本気で思ったー…。

 実際は目の前の地面に1本の雑草が踏み潰されて、根っこごと地上に放り出されてたのを勘違いしていただけ。なんだけど。


『お前ー…かよ』


 最後まで一緒に居てくれたのは、雑草だった。

 俺は、無意識にその雑草を抱き寄せた。

 気付いたら服から雑草を生やして、気付いたら異世界にいたんだよね。

 これ、後で考えたことなんだけどさ。俺が死んだ原因、どうやら過呼吸っぽいんだよね。『 雑草 』ってあだ名付けられただけで。死ぬほど大大大ショックを受けて、マジで死んだらしい。

 ここまで来ると……本当に。開き直るしかないよなぁ。


「おい。お前、こんな所で雑草育ててんじゃねーよ」

「そうだぞ。兄者の店の前で草生やしてるてめぇは誰だ? ギルド警察に訴えんぞ」

「もしかして、俺のことっすか?」


 世間話をしていた大柄な店主であろう兄者と呼ばれている男と、その弟らしき左目に傷がある男が口を揃えて。


「どっからどう見てもお前しかいねぇだろ」


 頭に雑草。服からも雑草。ズボンのポケットからも雑草。

 雑草を纏った……纏、まとった……? 纏って、いる……のか? おまけに、人の店の前で雑草を地面に育てようとしている。どっからどう見てもザ・変人男子に、最大限丁寧な口遣いで注意をする。


「兄者。コイツあれじゃないっすか? さっき話してた草操る奴。ええっと、最近有名になって来たっていう……ジワジワ成り上がって、最弱ギルドを上位ランキングまで引っ張り上げたっていう『 雑草 』だ! その真似でもしてんのか? 兄者、きっとコイツそうですよ!」


 どっからどう見てもザ・変人男子が口を開く。


「俺はー…」


 雑草。今は惨めどころか愛着しか湧かないんだけどさ。


「コードネーム『 雑草 』ですが、何か?」


俺っぽくて良いよね、雑草。俺は雑草好きだよ。




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