閑話その二
11月12日
「おいしいかい?朝ごはんは」
「おいしいですー!特にこのお魚!」
「だろう?新しいシェフは優秀だ。......本当は僕もノーラと一緒に行動したいんだけど、今日はシュヴェイツの高官との食事があるし、昨日は我が国の議会を尋ねる予定があったんだよな」
「ほんとにご苦労様です。で、昨日はどうでした?」
「どうって、いつも通り退屈な話をきいて、多数決が行われる様を見て、簡単なスピーチをするだけだったよ。もちろん、彼らからの信頼を裏切らないためにも、精いっぱいの真心をもって対応したけどね」
「たしか、二つのグループがあるんですよね」
「保守派と改革派のね。まあ、きみが気にすることじゃないよ。......本当は自分も気にしないでいられたらよかったんだけど。『公爵閣下』とか呼ばれるのは正直疲れるんだ」
「お仕事大変なんですね......」
「まあ、いざとなれば彼らの決定を無視してもいいらしいけど、むやみに慣例に逆らうものじゃないよ。強い権力をもつ者には責任が伴うんだよ、忌々しいことにね」
「そんなに強いんですか?カールさんの権力って」
「現代の立憲君主制国家の君主の中では断トツで強いはずだよ......どうしたんだい?いつもはそんなこと掘り下げないだろう?」
「いえいえ、別になんでも。こういう境遇ですから、好奇心と記憶力は大切にしたいんです」
「......なるほどね。でもあまりその対象を政治に向けないでほしいかな」
「どうしてですか?これからの仕事にも役立つとおもうんですけど」
「むしろ逆だよ!大きな国の政治に巻き込まれたら、きみの力がどんなふうに利用されるかわかったもんじゃない。あそこでは政治的暴力が激しくなっていると聞くし」
「でも、言うじゃないですか、『敵を知り己を知れば百選危うからず』って。無防備なままじゃいけないと思うんです」
「一理あるけれど......これだけは守ってほしい。あんまり偏った視点に立ってはいけないし、誰かの味方をしすぎてもだめだ。知ろうという気持ちは自分の願望に合う情報だけを引き寄せてしまうこともあるからね」
「えーっと、つまり中立が大事なんですね」
「そうだ。君に革命家になってほしくはないんだ。どうか分かっていてくれ」
たまにこういうセリフ多めの補足情報を書きます
重要だったりどうでもよかったりします