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カレアの双眸  作者: 琥珀
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パワーレベリング

 あれから数週間、僕はカレアとダンジョンにこもって魔物を狩っていた。

 目的は僕の冒険者としての経験を積むため。

 ひたすらゴブリンと戦闘をくり返し、殴られ、刺し、噛まれ、斬り付け。

 狩っていると言うのもはばかられるような泥臭い戦い方だ。

 カレアの祝福で死んでも蘇るのをいいことにがむしゃらに戦っていた。

 一日あたり五回は死んでいる。

 それでもまだ痛みに慣れない。


「アラン、無駄な動きが多いわ。攻撃をよく見て」


「やってるつもりだ!」


 ゴブリンのこん棒の大振りを避け、懐に飛び込んで下から斬りあげる。

 腹から脇に傷を付けるも浅い。

 返しの攻撃を腕で受け流し、体を回転させてがら空きの胴に深々とナイフを突き刺した。

 あがる悲鳴も気にとめず、さらに複数回のトドメを突き刺す。


 胸と腹に致命傷を負った魔物はうめき声をひねり出しながら一、二歩後ずさり、ゆっくりと倒れた。

 乱れた呼吸を整えながら殴打を受け流した腕をさする。


「体が丈夫にはならないんだな」


「地道に鍛えるしかないわ。死なないとはいえ駆け出しの冒険者に違いないのだから」


 カレアは自分の得物、大鎌を軽々と担いでひと振りしてみせた。


「筋力だけじゃない。体の動かし方、武器の扱い方にも慣れていくのよ」


「簡単に言う」


 冒険者とは名ばかりの素人なのは認めざるを得ないところだ。

 だが死をも厭わず立て続けの戦闘で無理くり経験を積ませるやり方は乱暴がすぎる。

 もう少し穏当な方法はなかったものか。


「わたしの祝福は他人に知られるわけにはいかない。あなた以外に効果のない、まるで役たたずなものだとしても、わたしを盾に取られてあなたを実験動物にすることはできるのよ」


「本当に呪いだよ、君の祝福は」


 カレアの言うとおり、僕は彼女を人質にされたら抵抗の余地がない。

 彼女が死ねば僕のかりそめの命も尽きることになる。

 死に際を助けられた恩はあるが、代わりに一生を彼女に捧げる呪縛を背負わされたと言っても過言ではない。

 あのまま死んだほうがマシだったのか、数週間経った今も答えが出ない。

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