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祝福を持たぬ者の末路
間違っていた。
何の役にも立たない僕がダンジョンに潜ろうとしたこと。
祝福も持たない僕がナイフ一本で魔物と戦おうとしたこと。
右腕の感覚がない。
両脚の膝から下がちぎれたせいで血を流しすぎた。
痛みすらなくなりかけている僕はここで死ぬ。
一本角の人型の魔物が僕からもぎ取った足を食べている。
祝福を持たない人間がダンジョンなんかに来ては行けなかったんだ。
目の端から流れた涙がこめかみを伝った。
「あら、大変なことになってるわね」
鈴を転がしたような少女の声が聞こえたと思った次の瞬間、魔物の胴体が二つに分かれていた。
グチャ、と水音とともにモンスターは地面に転がった。
「その傷……もう無理ね」
少女の声が遠く聞こえる。
やはり僕は死ぬのか。
仕方ない、祝福を持たないのだから。
「ん、あなた……」
ぼやける視界の中で少女が近づいてくる。
その顔に驚きのような表情が見えた気がした。
視界が暗転し、最後に聞こえた言葉が頭にこびりついた。
「見つけた、わたしだけの下僕」




