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ある青年

作者: ヌベール

ある青年が料理をしてくれた。

この青年、身長182センチ、すらっとしていてかなりの美貌である。

料理は本業ではないが、かなりうまい。


以前は自分が釣ってきた魚を刺身にするのが楽しみだったそうである。

結構大物を釣ってきて3枚におろし、私たちにも振る舞ってくれた。

船釣りではなく、岩壁から釣るのだそうである。

このあたりがこの青年らしい。


ところで1度か2度、釣ったウツボを料理してくれたことがある。

ウツボというのは骨格がかなり複雑で、普通の人は料理できない。

一流の日本料理店でもウツボを出すところは少ないそうで、ある店のウツボ料理の骨の切り分け方など、門外不出の秘伝となってさえいるそうだ。

しかしこの青年、それをいとも簡単そうにやってのけた。

ウツボは実に美味である。ご馳走になった私や妻も、あの味は忘れ難い。


昨日は新鮮な鯛が手に入ったというので、アクアパッツァというイタリア料理を作ってくれた。

ここ1、2年、彼は刺身から離れ、イタリア料理に凝っているそうだ。


パスタはよく作るそうだが、たまには鶏肉を使ったカチャトーラという料理や、昨日は久々にアクアパッツァという料理を私たちに振る舞ってくれた。


味付けは塩とオリーブ油くらいだと彼は言うのだが、鯛から出た汁が抜群にうまい。いや、ドライにしたプチトマトや、なんだかんだの野菜類のコクも混ざっているのだろう。


彼に言わせればシンプルで簡単な料理とのことで、そのタイの身の味と言ったらたまらない。

おっと、前菜に妻がポテトサラダがたっぷり入った野菜を出してくれたのも付け加えなければならない。


そして大きなフライパンいっぱいの鯛は、あっという間に骨だけになる。

で、残った汁にフランスパンを浸して食べるのが、また抜群にうまい。よく使う表現だが、ホント、舌がとろけそうである。


話が長くなるので、私とこの美貌の青年との関係にはここでは言及しないが、この男、何をやらせても人並み以上にやり、うまいことに関してはプロ並みだと思うことがある。

思考も私などより遥かに深い考えを持っていて、何にでも不思議に詳しい。

大した男だ。ちょっと変わったところがあるが、こういう青年と付き合えて、私も幸いだと思っている。


しかし20代半ばになって、未だ無収入だそうで、それだけが本人も辛いところらしい。

何か特殊な技能が必要な、クリエイターみたいなものを目指しているそうだが、私はこの青年なら、きっとやれるだろうと信じている。


なに、心配するな。収入はそのうちついてくる。

自分の道を信じて歩め。

料理をご馳走になった後、その出来に私はひそかに、そう思ったのである。


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