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あなたって最低ですね

 知っているその熱ハイネの温度が伝わって来た。


「あなたに罪をこれ以上重ねて貰いたくありません。だからこれから私はあなたの罪を、教えます。教えてしまいます。あなたの心に罪の形を刻みます。知らなければ情状酌量の余地で罪が軽減されるでしょうが、知ったからにはもう駄目になります」


 ハイネは口を閉じるとジーナの手の震えに気がついた。何かを恐れている。自分の知らない何かをいまこの人は背負ってしまっている。


 私が、知らないために無知であるために、泣いて震えて……ジーナは逆に手を握り返し震えを止めさせようとするとハイネは驚きの表情を向ける。


「なんだか知らないが、そこまで私のことを考えてくれてありがとう。どうか話してくれ。罪があるのならそれは私のものであり、ハイネさんが傷つくのは見たくない」


 ハイネの震えが止ったとジーナは分かりその瞳の色も鮮やかな朱色へと変化し輝きを放っておりジーナは吸い込まれるように顔が近づいて行く。


 呆けたようになっていたもののハイネは何かを感じたのか顔を左側に流していきジーナの首に捕まるようにして抱き合う形となった。


 ごく自然な態勢となったために二人はそのことの異様さをしばらくの間、自覚できずにいた。


「見たくないって、私を傷つける張本人がそんなことを言うのはあんまりですね」


 ジーナの右耳に注ぐようハイネが囁く。


「あんまりとはあんまりだな。じゃあこれは私への復讐としてどうぞお話しください。罪を背負わせ巻き添えを食わらせたのですから正当なものなはずで」


 首を締め付ける力が強くなりジーナは思う、どれだけ重い罪なのだろうかと?


「なら話しますが一人で背負うとかそんな勝手なことは言わないと約束してください」


「私の罪だろう?」


「だからそういうことはやめてと約束して欲しいのです」


 ハイネの掴まる力がまた加わり体と体が一つになるぐらいに近づく。するとさっきまでしていたハイネの香りは消え、その体温まで感じることが無いようでもあった。


 他者である垣根を乗り越え自分のものは相手のものであり、相手のものは自分のものとまで身体が重なり合い、まだ一つにならずに残るものは……


「私が嘘をついて、はい分かりましたと言っても、罪は消えません。消えるわけがない。それなら共有していると認めてください。二人で分かち合わねばならないのです」


「だからといってハイネさんにも苦しみを背負わせるのは」


「手遅れです。私はもう、苦しいのですよ。ずっと。それにこれはヘイム様とルーゲン師のために背負う罪であり、ジーナさんのためとかそういうのではありませんので、めんどうな勘違いを起こして私を煩わせないでください。言ってください、はい分かりましたハイネさん、と」


 ジーナは苦笑いの声を出すとハイネもちょっと笑い声を出した。


「分かった分かったはい分かりましたハイネさん、と。まぁ仰せの通りもう手遅れでどうしようもないのなら、このままハイネさんも道ずれにして苦しんでもらおう。そして私はその分、楽をします」


「最低ですね」


「元凶だから仕方がないです。けどあなたがいて良かった。おかげで自分の不味いところが分かるかもしれないし」


 ハイネはなにも喋らないために間ができ妙な時が二人の前を走り去っていきジーナはその沈黙の時を静かに待ち続けた。再び動き出すまでを。


「……ジーナさんはちょっと馬鹿ですから罪は軽くなりますかね」


 第一声がそれかと耳を疑うとハイネは追撃とばかりにまた耳に息を吹きかけた。ジーナは驚き変な声を出しながら重なっていま手と身体が離れ互いに真っ直ぐ背を伸ばし向かい合った。


 もっと違う方法があるだろうに。


「まず大前提としてこれは可能性の話であり確実なものではございません。よってそういう可能性もあるかもしれないと、それぐらいの認識でお願いします」


「わっ分かった。それでヘイム様の遊びに協力している罪とはなんだ? 遊んでいるようには見えないけれど」


 熱で若干上気しているハイネは一度ジーナの眼を見るがすぐに伏せてしまう、それから語りだした。


「不敬なのは承知ですけれど結論から述べます。ヘイム様はあなたと仲良くしていることをルーゲン師に見せつけてその反応を楽しんでいらっしゃるのです。つまりは」


 あなたの間にあったあれこれは全部芝居であり遊びであり、ルーゲン師に向けたもの……先読みできたジーナはその言葉を聞くや思考よりも前に大声が出た。


「いや、ありえない。それは間違いだ」


「さすがのあなたも察しましたか。傷つけ哀しませてごめんなさい」


 またハイネはジーナの手を握り締め涙目で見つめてきた。

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