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邪魔をするというのか?

 小声であったのに聞こえたのか椅子を引く音が聞こえた。遠くにいることは分かっていた。この時まで座っていることも。


 こちらの話を一切聞かない振りをして、誰よりも聞いていることを。そうであるが知らない振りをすることもジーナには分かっていた。


 立ち上がり向かってくるその音を聞きながらあの日以来これとは口を利いていないとジーナは思い出した。


 そのことは自分は気にはしていないがあちらはしているのだろうなとそのブリアンの瞳を見て理解した。


 この男は怒りと軽蔑で以ってこちらに相対峙していると。数秒の沈黙の後、ブリアンは笑った。その下卑た嘲笑、に見せようとしている笑み。


「俺はね近衛兵になりたいんだ。そのために龍をこの手でぶっ倒していいのなら俺は命懸けでやるぜ。そうすりゃ確実に俺はそれになれる。栄光はすぐに手に入る。そうなのにあんたはそんなものには興味ないような顔をしていやがる。だからあんたにその地位は、渡したくねぇな」


 ブリアンは睨みつけてくるなかをジーナは視線を外さずに立ち上がり一歩前に出る。


「私は近衛兵になる気は毛頭もない。なりたいのなら私が龍の側近達に掛け合うが」


「あんたに協力は頼まない。俺は自分の手で手柄を立ててその地位に就く。二番手だとはいうが龍の前に立ったら一番手も二番手も関係なく、やらせてもらうからな」


 見開くブリアンの瞳には怯えの色はあるものの覚悟の色といった光を放っているのを見たジーナはまたブリアンに怒りを覚えた。


「龍を討つのは、俺だ」

「邪魔をするというのか?」

「そういうことになるな」


 気圧されるのを耐えるようにブリアンは顔を前に出してきたためジーナは自分の瞳が金色になりそうなのを感じていると、二人の間が裂かれノイスが割って入ってきた。


「邪魔にはなりませんよ隊長。ブリアンはあなたを支援し任務遂行に役立ちます。いつも通りに。ですが隊長の頭の中はいつも通りでは、ないですね」


 振り返るノイスは心を読むかのような、すべて分かっているかのようなそんな表情をしながらジーナとみんなに語りだす。


「隊長が隊員らの身の安全に心を砕かれることに対し俺達はいつも感謝しています。今回は任務も任務なので隊長の苦悩も理解はできます。ですがこれはこれが第二隊の最後の任務あり使命です。これを終えた時、俺達は各々の国に元の世界に戻り帰れる」


 そうだ帰れる、とジーナは思いそして隊員らも一斉に頭にそのことを思い浮かべた。


「架せられた罪は浄化され新しい世界へと清い身となって帰るのです。その目的を達成する為には私情を排し万全を期して一丸となって事に当たりましょう。一人でやるとかではなくて、です。だからブリアンも突っ張らないで協力すると言え」


「……分かったよ。最低限の協力はする、だがあんたが駄目だと分かったら俺は遠慮はしないぜ。これも任務遂行のために必要なことだ」


 おかしな仕掛けだなとジーナはブリアンの声色で理解した。こうでもしなければならないこととはなんだろう?


 そこまでして私を一人にして戦わせたくない意図とその心とは?


「お前の言うようにはならないとは思うがな」

「どうかな?」


 ふざけているようでいてその時の眼は真剣なものであり、ブリアンや彼らは私のいったい何を疑っているのか?


 ジーナは龍を討てないとでも思っているのか?


「まぁまぁお二人。では危機は去ったということで隊長、最後にみんなに気合いを入れてやってください」


 視線が一斉にジーナを向いた。


「気合いというか、命令を出そうか。第二隊のみんな。私は任務を完遂させこのままみんなと共に龍の間から生還したい。それは困難であるだろうが私はそうするよう努めるからみんなもそうなるよう努めてくれ。完全なる任務遂行を望む。私の命令として以上だ。約束の時を待とう」


「はい!」


 男達の一つのまとまった声が発せられるとテントの幕が開いた。


「おぉ団結式ですか……見事ですね。良い声だ。まるで一つの声のようで。これがあの懲罰隊であったというのが信じられないぐらいです。よくぞここまで育ち完成したものですね」


 正装に身を固めたルーゲンが現れると場の空気は一変した。


 導き手である案内人が来る、ということはつまりそれは。


「第二隊の諸君。戦況ですが先ほど第一隊が正面突破を果たし、後続の各隊が重要拠点を制圧しだしました。激戦の嵐はもうじきある程度はおさまり道が開けます。海が開くように、です」


 聞きながらジーナは一歩足を前に出した。誰より先に足を出し前に出る。


「龍の間への道が開き出しております。討つべき偽龍のもとへと案内いたしましょう。共に戦いましょう、これが最後の戦いです」


 ジーナがもう一つ歩き出すと隊員らもあとに続き足を出した。


 入り口に入り込む強い日差しを浴び眩しさに視界が消えるその瞬きのなかでジーナはルーゲンの言葉が繰り返された。


『これが最後の戦いです』


本当に? ジーナはその言葉を口の中で転がし、飲み込む。濁りが身体中に広がった。

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