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私が失敗した場合

 どうしてこんな言葉が? だが止らなかった。


「この状況でその申し出に感謝する。私は確かに一人で早急に決めてしまったかもしれない。隊全体で行動するというのに異論は許さぬ態度は、悪かった。すまない」


 抵抗のための反響は無かった。隊員達は口を閉じ静かにジーナの声を聞いている。その言葉が決定事項のように部屋中に満ちていく。


「けれども全員でやるという案、それは却下する。みなが私のことを心配してくれる気持ちには感謝している。だがそれとこれからのこととは切り離しておこう。まず言っておくが龍は、とてつもなく強い」


 まるで実際戦ったことがあるかのように、とは部屋中の誰もそのようなことは考えなかった。


 龍とは無条件に偉大であることは考えなくても分かっていることであり、改めてそのことを認識させられる言葉を聞いたために全員の頭が痺れた。


 努めて考えようとしなかったことをこうして話され、思考が麻痺していく。


「私達は龍とこれから対峙し、戦う。向うの状態がどうであるのかは不明だが、座して討たれるような状態ではないことを前提に考えよう。龍と対峙するその時に私は不信仰であるためにそのまま剣を抜くことはできるが、みんなは躊躇いが生まれてしまうだろう。それは仕方のないことだが、命に係わることだ。おまけに龍には不思議に力がある。信徒の動きを封じたり操ったりする力や……致死的な毒をも有しているものもいる可能性がある」


 はっきりとあると言いたかったもののそこは踏み止まり同様に隊員らも当初の勢いは治まり、後方に体重が移りながらもそこで踏みとどまってはいた。ジーナはそこにもまた感謝の念を感じた。


「接近戦は奴の方が有利であり混戦は避けたい。だからみんな龍の間においては基本的に距離をとりそこからの援護を頼む」


 幾人かは小さく頷くのを見たジーナは結論へと向かう。


「この任務は万が一にも失敗は許されない。いまも戦う前線の各隊の仲間たちもその戦いは私達に最後の一手に繋げて託すために命を賭けている。私達は個人的感情を抜きにして任務を完遂させるための行動を取る以外は許されない。私の計画に問題があるのならもちろん改良すべきであり、現にいまいまみんなのおかげで疎漏が見つかった。意思の統一と討ち手の二番手の設定だ」


 ほぼ全ての隊員が無言で頷くのを見てジーナは自分の弱さを再確認した。こう言われなければ、分からなかったとは、と。


「意思の統一は今なされている最中だと思う。そして二番手の設定で完成するだろう。一番手はこの私という点は変わらない。客観的に龍と対峙し躊躇なく戦えるのは、私を置いて他にいない。それはそのまま討てる可能性が最も高いということだ。だが、高いというのは確実ではなくあくまで高いところであり、失敗する可能性もある」


 自分が失敗をしたら? 龍に返り討ちにされたら?


 考えもしないことであり、それよりもっと考えもしないこととは、そのまま後のことなど知ったことではないということであった。


 死はそのまま終わりであり他のものたちのことなどどうでも……とジーナはまた隊員達を見渡した。


 興奮と緊張で苦しげな表情の中にそこには確かに自分への労りと慈しみの色があった。


 必要などないのに、とジーナは首を振りたくなったがそこは堪えた。何のために? 自分を見つめる隊員たちの心に配慮しての。


 そんなのは必要ないというのに。互いに利用し合うだけの関係でいたかったのに、彼らはそれを許してはくれなくなった。


 自分への違う心を向けて来るのをジーナは内心で迷惑だと思った。自分は、そのような価値のある存在では、ないというのに……


 逆襲の末に討たれたのだとしたら彼らも生きては帰れまい。


 昔ならそれでいいと思っていた。自分の命以外など、ジーナの命以外のものへの興味は無かったというのに。


 いつからこうなってしまった? いつから……それは龍の館へ向かう道の途中で……


「ブリアン、いいな」



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