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龍に関するタブー

 声が裏返った。異常を察したのかルーゲンの眼が光り、ジーナは怯む。


 眼光にではなく自分の衝動に。そんなことを聞いてどうするのか? 意味は無いはずなのに。


 どのような答えが返ってきてもやることは一つだけであり、ただの順番の問題であるのに、私には……いいやジーナには関係ないというのに。


「分裂」


 意味が通じないためにルーゲンは首を傾げジーナは緊張と期待で胸が押し潰されそうな中、口を無理矢理開けた。


「その、龍が分裂したのはどうしてですか? 中央とソグ側に、です。いえ徳を失ったと言われるのでしょうが、そういうものなのでしょうか」


 おや、とルーゲンは珍しいものを見るような眼つきで、実際にかなり珍しいのだが、ジーナを更に見つめる。


 こんな風にちょっと踏み込んだ話を振って来るとは……ルーゲンは固い顔から即座に柔らかな笑顔となり話を受け止めることにした。


「ここはもちろんわかりません。因果関係も不明であり、一連の事の経緯と順序がどう繋がるのか未整理です。公式的な見解ですと中央の偽龍が自らは龍の正統でないことに焦り血族を皆殺しにする暴挙に出るも、到着が遅れていたソグの王女の龍の血が覚醒なされた。こうなりますね。知的怠慢と言われるでしょうが、これ以外の解釈は出そうもなさそうです。というのも過去の龍を巡る内乱の経緯もこの分裂だと考えられているためでもありますけどね、それでジーナ君」


 いつもの解説が終わったルーゲンが前のめりになって尋ねてきた。左右の大きさの違う眼がジーナを捕まえる。


「君の見解及び解釈はなんですか?」


 嘘は言えない、とジーナはまず思った。誤魔化しはできないとも。


 この瞳を見るとそうなってしまう。特にこの歪な両の眼に見られると、真実以外のことは言えなくなる。まるでジーナの瞳の光のように。


 ならば口を開かなければよかったのに。質問などせずに黙って計画の話をしていれば何も問題は無かったのに、どうしてお前はそんなことをした。


「君はどうしてそのようなことを聞かれたのですか?」


 沈黙から呼ばれジーナはまた固い口を大きく開く。


「……中央の龍が他所から来たという可能性は、いかがでしょうか?あの突発的な行動は別の邪悪な龍によって引き起こされ、このような事態となった。つまり中央の偽龍はそのままの意味であり真っ赤な偽物であり、こちらの龍はそのままの意味で本物。こうであれば、なにもかもが……解決するのではないでしょうか?」


 解決とこちらにだけ関係する意味不明な言葉を使ったことにジーナは動揺するもルーゲンはそこはどうでもよさそうに瞬きもせずに話を聞いていた。


 頷きも声も出したりもしない。その姿はただ考えているだけであろう。今の言葉の意味を。


「ジーナ君ひとつ聞くのだけど、他の人にこのことは話したりしました?」


「あっえ? 話してはいません。ルーゲン師にだけ初めてお話しました」


「そうですか。僕の前で良かった」


 安堵の息をつきながらルーゲンは後ろにのめり椅子の背もたれに身体を預けた。


「まず言っておきますが龍の渡来説は、タブーの一つです。その理由はお分かりにならないでしょうが、そうしますと龍が複数いるかもということになるからです。この世界の秩序の前提とは一つの龍によるひとつの秩序体系、これ以外は我々にとっては想像を超えております。信じる、信じないは君が異国のもの、秩序から外れたものであるから大目に見られるのです。それに君は行動的には龍の信徒の範となるものですからね。ですが龍が外からやって来たものであり他にもたくさんいるぞということを吹聴することは、出鱈目を広げたという大罪です。たとえ君でも許されることではありません。この二頭いるという異常事態は分裂してしまったからという公式発表を乱すことにもなり、分裂による混乱事態であるからやむを得ずというこちらの行動の正当性をも乱すことにもなります。以後お気を付けください。ただし、学者にとってはそうではない」



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