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世界平和のため仕方なく結婚してあげます

 あなたが素直にこっちを向いていれば全部丸く収まったのに、そうだ、あれが、悪の元凶、悪の権化、黒幕、世界を乱すもの。


 倒さねばならない、ではどうやって? と考えるとバルツ将軍が頭の中に現れた。バルツ様に今後のことを相談するのがいいな。


 近衛兵構想はうまい具合に姉様に難色を示させたことでこの先は議論の俎上には乗らないだろうから、辺境の将軍職が最適か。


 そう、彼が西の将軍となるようにバルツ様にかけあってみよう。


 どうせまた戦功をあげたものの褒賞なんて要らないとめんどくさくごねて困らせているのでしょうから、ここはまとめてドカンと大きくやってはどうかと。


 それにそこの管理は私がやりますと伝えれば当然どうしてあなたが? と聞いてくるだろう、そうしたら実は私達は……と言ったとするとバルツ様は驚くだろうが、あっでもこのことはどうかご内密にお願いしますといえば、将軍は私を信頼してくれるしどこかの誰かと違って婦人に対して優しい御性格だから約束を守ってくれるだろう。


 今までここまで考え詰めなかったが、この手は使えるな、とハイネの気分は高揚してきた。


 そうよ、いざとなったらジーナにされたあれやこれを訴えれば、嘘じゃなくて実際にされたことだからどうせならこの際は少しぐらい盛って伝えてもいいはず。被害者には味わった苦痛の分だけその権利がある、うるさいあるのだ。そういったん言葉にしてしまえば以後真実扱いされるしね。


 そうしたらたいへん、真面目一徹なバルツ様はこちらの味方になってくれるに決まっているからジーナを呼び出して確認するだろう、あれは変に嘘を吐けないある意味誠実な男だから認めるだろうし、一部を認めたら全部認めたということとなり、強く言われれば責任を取るというだろう。


 もしも私と結婚となれば、あの頑なな人も諦めるかも? とハイネはますます楽しくなってきた。それは良い。あれと結婚するつもりは元々全然なかったけれど、こうなったら仕方がないし世界の平和及び秩序の為だ。


 私も為政者メンバーの一員なのだからそこら辺は敢えて忍ばないとならないし、もしもヘイム様が本気でルーゲン師のことを嫌っていても、そこは世界の為に我慢してもらわないと。


 私だって耐えるのだから、しょうがありませんよね? お互い様、自分だけのわがままなんてゆるされませんよ。


 それに別にいいじゃないどころか最高ではないですか婿としてのルーゲン師は。まったくどこに不満があるのやら私にはさっぱりわからない。贅沢にもほどがありそういうのはまことに自分勝手すぎですよ。


 馬車がまた一つ大きく揺れたがハイネはピクリとも反応しなかった。


 いまはそれどころではない、馬車が揺れようが世界が揺れようがこっちは思考の詰めの詰めの段階なのだから。


 自分はこれからジーナに会いにいくわけだけど、なにも恋しいとか愛しいとか、そういうことではなく、勅使としてそして世界の秩序を守るために前線に赴くのだ、そう一人の戦士として。とハイネは自分に言い聞かせだした。


「私は戦う」


 誓いを立てるとハイネの中から熱いなにかがこみ上げてきた。


「この件の根本的原因を倒す」


 それはジーナへの怒りであり、決まったからには憎まなければと思うと、すぐに簡単にできた。


「私にこんな苦労をさせて、あなたがいなければ何もかも順調に進み完了していたのに。もう許せない、今回は何事も強く出る。妥協をせずに何事も前に出て、あの男のおかしな考えをやっつける、これよハイネよ私」


 勝手にすべての事柄を決心すると馬車が止まった。事故? と思い外を見るとそこは宿営地であり周りの騒音が耳に入ってくる。


 そう、いつの間にかハイネは目的地に到着していた。戦いの場に到着した。

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