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手紙の終わり

『それは物理的にではなくて心理的にだと答えるとそれでは僕の場合は心理的に重くないから楽なのかな? とルーゲン師は返しそれからこう言いました。そうなると君はいつも重いものばかりを背負っているのだな、と。


 どうしてだかその言葉は私の心に染み込み、癒されるものがありました。


 完全に眠ってしまったルーゲン師をソグ僧の天幕までお運びし僧に引き渡す間も師は起きずに礼すら述べられない姿が珍しいと共に、それが今回の任務の苦難を現すものだと私には感じられ、恐縮する僧に対して逆に礼を述べて自隊の天幕に戻り泥のように眠る隊員たちの呼吸音が聞こえる中で、私は机に手箱から手紙の紙を取り出し開き筆をとりこうして手紙を書いているわけです。そうまだ私の任務を終わってはいません。


 こうして溜まり続けた報告を書かなければならないのですから、けれどもこれは重荷ではなくむしろ淡い解放感にいま包まれています。


 任務中は手紙の類を書くことは禁止されていましたので日々頭の中でどう書こうか、今のはなんて書こうか、どれを中心に書けば、上手く伝わるかと考え続けてたために、頭の中が重くて仕方がなく、こうして書けば書くほどに頭が軽くなっている気がしてもとからあまり入っていいないのに空っぽになってしまったらどうなるのか? とも不安になってきたと思ったらこうして今現在に到着いたしました。丁度いま眠くなってきました。


 眠くなって終わりにするとか誠に勝手ですがもう眠ります。このまま郵便箱に入れましてすぐに来る予定の郵便隊がそちらに持っていくでしょう。そちらに届きあなたが開き、それから嘲りの笑みを浮かべ私を馬鹿にする。そこまで想像できてしまうのですが、このまま投函致します。長々しいお手紙でしたがどうぞ御収め下さい ジーナより』


「バカよなこやつは」

「早く寝ろですよね」


 無残な言葉が続けざまに続きシオンは笑った。


「まぁまぁ良いじゃないですな。毎回この調子だとヘイム様も楽しいですよね」


「男同士のイチャイチャ話など毎回聞きとうないわ。ハイネの狙っておったな発言を聞いてから読み返すと最後の最後までルーゲンの行動はいちいち芝居がかっておって故意的であるな。それにちっとも気づいている素振りを見せないジーナもジーナで実にあやつらしい。ルーゲンが詐欺師ならまるっと騙されておるし、ルーゲンが女であったら、誑かされて大変なことになっておったぞ」


 首を振りながらヘイムは目を伏せて項垂れているもシオンから見るとそれも大変に演技臭かった。


「あのですねヘイム様。そんなおかしな仮定をして心配しなくても大丈夫ですよ。どうひっくり返してもるルーゲン師は男のままですから」


「分からんぞ。世の中なにが起こるかなんて誰にもわからぬからな。明日にでもルーゲンが女になるどころか、あのジーナは女になるやもしれん。いやいやいやあれが男であったのが不幸中の幸いであったな」


「この世で最も不要な心配ですよそれ。どうしたらあんな骨格な存在を女にできるのですか。あっ想像しただけで眩暈が……」


 しなかった。そのうえシオンの脳裏には見たこともない女が浮かびそれをすぐにジーナだと認めた。



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