本当に好きあっているんじゃないですか?
怒鳴り声にハイネは動じなかった。
「だって姉様。例えばルーゲン師の性別が女でこんなことしたら、どう思います?あざといを通り越して頭に来ますよね。私はそういう女は嫌いです」
「好きな女はいませんけどその仮定はルーゲン師が男であるから決定的に誤りです。なにもあなたは男相手に……」
焼き餅を焼くことは無いでしょう、とは続けられなかった。
シオンがヘイムの前で嫉妬をするなとは言い難くしていると横からヘイムが顔を乗り出してきた。
「じゃあなんでこのようなことをしているのだ?」
そんなの知りませんよと言いたかったが、そう言ったが最後やはりルーゲン師はそういう男だということになってしまう。
なんでこのような擁護をしなければならないと頭が混乱させているとハイネが首を振って止め普段の表情に戻し、息を吐いて言う。
「ああ、分かりましたし思い出しました。それはですね今後のためにジーナと交友を深めていこうといつかルーゲン師が仰っていましたね」
さっきまでの嫉妬全開の表情と声が一転し、いつものハイネに、そう作為的なハイネの表情と声に戻っていた。
「ソグ僧はもといルーゲン師はシアフィル解放戦線の方々とは親交といったものがもとからなく、いまも手探りで両者は交流を図っておりますよね。バルツ将軍ぐらい社交的というか篤信家ならソグ教団の方々とすぐに打ち解けられましょうが、他の方々とはゆっくり進めていくしかないでしょうね。そんな中でルーゲン師は将来性があるも解放戦線内からは浮いているジーナに目をつけてもおかしくはないと思います」
突然の豹変にシオンは驚くも、これがいつものハイネでありさっきまでのが本来おかしいのだが、それでも違和感が生まれていた。
「あれと付き合ってどうするというのだ?」
「付き合っているとかではなくてですね」
ヘイムのからかいにハイネのちょっとイライラした声で返したのが却ってシオンは安心感を抱いた。
「さきほども申し上げましたようにジーナは近衛兵や西方の将軍職に任命される可能性があると、私は思っておりますし、いずれかの要職に就くべきだとも。そうだとしましたら現在ノーマーク中でそういう政治状況の中では孤立しているジーナと手を組むのは、言葉はあれですがお得ですよね。軍隊内では彼は一目どころか二目も三目も置かれておりますし……私達から見たらかなりおかしいものに見えますが」
二重性、とシオンはジーナのことを考えた。彼の軍隊内での敬意の払われ方と人望、公文書に記載された戦功など外から見るとなんという偉大さに向かう戦士だろうと思わざるを得ないものは確かにあるものの、内側から見たらなんという無礼でわがままで女性軽視かつ色魔と極端な差は二重人格を思わざるを得なかった。
二つの両極端な人格が同居しているように二つの魂があの身体の中にあり、各々のタイミングで顔を出すように。最高の戦士と最低の男と。
「そうだとしたら……ルーゲンは中々に抜け目のない策謀家だであるな。あの純粋な、ああ馬鹿なジーナを企みに組み入れようだなんて」
「企みだなんて。それにジーナもルーゲン師と仲が良いことは将来的に絶対に良いはずですし。これ変な意味では絶対にありませんよ。ヘイム様はジーナとルーゲン師の仲がそこまで気になされるのでしょうか?」
「気になど全然しておらんが」
即答は嘘だ、とシオンは瞼を閉じて手紙を手に取り読み出した。
続きを、話題を変えないといけないへイムに余計なストレスを与えてはならない、この件にはもう
「……またルーゲン師ですか。本当は好きなんじゃないんですか?」




