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あの二人はできているのではないか?

 ハイネが独り言のようなとても小さな声を出したが、室内によく響いた。


「報告書なのに……彼は普段からこういう書くのですか?」


 空気に向かって言っている声であるのにヘイムは答えた。


「うーんどうであろうな。書いているようで書いていないようで」


 ぜんっぜん書いてはいないでしょ、とは言えないシオンはもどかしさに足踏みをしだした。


 だから今回は面白いとみんなで読み出したのではないですかと。


「このように強めの表現を使うのは今回が初めてだろうな」


 そうそうそうですとても珍しいことです、とシオンはすっきりし足踏みを止めた。


「これぐらいで強めなのですか」


「あれにとってはこれでもかなりのものだろうに。知ってはおるだろう? 高揚していなければあやつはこのようなことは決して書かんと。これも教師であったハイネの努力のおかげであるな。あやつのためにもなるし妾の楽しみにもなっておる、感謝しておるぞ」


「……身に余るお言葉でございます」


 不思議さを感じさせるその素っ気なさにシオンは声を掛けようとするとハイネは急に笑顔になった。


「それはそうとジーナって手紙の中でのルーゲン師への言及がやたらと多くありません?」


「そう言われてみるとそうですね。視点がルーゲンを追っているのが続きますね」


「普段は風景描写ばかりであるが今回のは人物描写であるから楽しさがいつものとは違うのだろうな。それにしてもまるで恋人にばかり見てしまう男みたいな感じを出しておるが……そうだなあやつはルーゲンのことが好きなのであろう」


「よしてくださいよそんな変なことを言うのは」


「なんとなく、分かります」


 冗談かと思って笑ったシオンの眼のまえでハイネが真面目な顔でそう言った。


「あのハイネ?」


「そなたもそう思うか。まっ見ればすぐに気づくよな。あのジーナはルーゲンの言うことには素直に聞きがちであるし」


「そこは私にも分かります。私達の言葉にはすぐに反発する癖に」


「女だと思って軽く見ているんじゃないんですかね。やっぱりそういうところは多々ありますよ」


 ハイネの頬が怒りで紅潮してきたのを見たシオンは鎮静化に乗り出した。


「落ち着きなさい。ジーナは女だろうが相手が将軍だろうが変に意地を張る男ではないですか。ハイネがあれより背丈が高い屈強な大男だとしてもあれは反抗しますよ」


 ハイネは吹き出し咳込み顔を伏せた。


「失礼、確かに。基本的に彼は強いので暴力ではそうそう屈服しませんから、そこは精神的な何かなのでしょうかね」


「そもそもジーナみたいな男が女を尊重するタイプであったらそれはそれで不気味だがな。そんな男であるがルーゲンはルーゲンでジーナのことを気に入っておるよな」


 シオンは驚きつつ賛同する。意識したことは無かったが思い返すとあの二人は、いやルーゲンはやたらとジーナに世話を焼いている。けれども


「そうは言いますがルーゲン師は満遍なく誰にでも親切ですよ。ジーナに対しては無信仰者の外国人だからより親切にしているのでは?」


「ちと度が過ぎている親切さであるぞ。だから妾はたまにこう思ってはみるのだ。ルーゲンはジーナの事が好きなのではないのかと」

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