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辺境将軍にでもすればよろし

 これはこれで良くない言い方だとシオンは思いつつも、抑えることができずに言うとハイネが顔を向けてきた。その哀しげな顔……むっ表情を作っている?


「えっ? 姉様はジーナに反対しますか?」


 言い方もなにかおかしいけれどもシオンは気にしなかった。


 それよりも今はのぼせているこの娘の頭に冷や水を掛けなければならない。


「そうなりますね。近衛兵はやはり身元のきちんとしたものでないといけません。彼の実績は申し分ありませんが、身元という点ではまるで駄目ですからね」


 別にそれはどうでもいいのだが、とシオンは内心で思うも反対するためにそう言わざるを得なかった。そこを問題にしないと反対論が不可能となる。


「バルツ将軍といった武人系の方々はその点は問題ないと言いそうですが」


「彼らはそう言うでしょうが、近衛兵というのは特別なものです。龍の守護をするものなのですから忠誠心の厚いものを中心に構成しなければなりません。ジーナは忠誠心という点も不信仰者というのが引っ掛かります。いえ私も彼の活躍は素晴らしいと思いますし讃えますが、それとこれとは分けるべきでしょう。近衛兵長もやりすぎですし、もし功績抜群の彼を近衛兵にしましたらバランスが悪くなるともそう感じられます」


 いいぞ私とシオンは勝手にぺらぺらと回る舌を鼓舞した。全部いま考え喋っている事だけど、前々からそう思っていたように言えている。


 これならハイネを説得できるとシオンは一人思った。


「だいたいジーナ自身も近衛兵はやる気はありませんよね。気が変わったという話を聞いたのですか?」


「……いいえ。彼はそのようなことは一切。いまのはその、私の勝手な希望論でして」


 分かっていますよとシオンは頷き、少しは落ち着いてきたようなハイネの表情を見ると、むむっどこか楽し気?


「シオン様のお考えでは近衛兵以外ではどこがよろしいでしょう?」


 どこでも、とは言うことはできずシオンはこの心を疑われぬように間髪入れずにそれっぽいことを言うことに成功した、気がした。


「西ですね、そう西方の将軍職当りが妥当ではないか前々から考えていましてね。故郷が近いのはなにかと便利でしょうし西との交易の場合は彼は使えますしね。まぁもっとも、ここでこのような雑談で将来の処遇を決めるのは時期尚早といえますから、なんとでも言えますけどね」


 畏まりました、とハイネは寂しそうに、だが満足気に頷いているようにしか見えないことにシオンは不安に覆い被さった。


 なんだろう、なにか逆にまずいことでも言ってしまったのか? ハイネがジーナを傍らに置きたいと言ったから反対し中央から遠ざけた、これはハイネの反感を買って当然のことなのにまるでその気を放ってはこない。


 まるでそれでいいのですと言いたげなぐらいで……だがシオンはヘイムが瞼を閉じていることに気付き我に返り思考を中断させた。


 負担を掛けさせてしまったとシオンは自身に腹が立った。しかもあんな男の問題なんかで。



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