ヘイムとハイネ
雑談はここで完全に打ち切られ予定外の会議へと入っていく。
シオンは用意をしていなかったがハイネは用意万端なために万事を任せて良く、隙間の時間が有意義なものへと変わっていった。
「これなら予定していた次の会議を開く必要はありませんね。僕もたまたま偶然資料をもっていたためが良かったです」
ルーゲンの確認も終わりヘイムは文面を見ながら呟いた。
「では次の会議はやめにして直前にもう一度集うこととしよう。時間ができるわけだが、まぁ眠っておればいいか」
「それはとてもいいですね。最近あまり寝ていないものですから助かります」
ヘイムの呑気な提案にハイネが乗っかりそういうことになるがシオンは戦慄した。
もしかしてその時間を使ってこの子は……
「というのは半分冗談で軽い打ち合わせで時間を埋めるとしよう。確認のためにハイネはその時間に来てくれ、頼んだぞ」
畏まりましたと言うハイネの言葉にシオンは内心で安堵した。偶然であるがヘイムはハイネを縛るような動きをして助かる、と。
時間ですとルーゲンも立ち上がりシオンも椅子から立った。だがハイネは椅子に座ったまま書類に手を加えている。
「どうしましたハイネ?」
「私はもう少し残りましてヘイム様と今後の打ち合わせを致します。私用のことも混じりますので私のことはどうぞお構いなしに」
私達がいないのに残る? 二人で? それは良い事だとシオンは頷いた。
前々からヘイムとハイネの間には変な壁がありなにか隔たりがあるとシオンは苦々しく思ってはいた。
しかしそうであっても仕事の話やらは問題ないどころか呼吸が完全に合い些細なミスが生じる隙間が無いほどである。
まるで二人は一つのように……だがそれ以外のこととなるとそれ以上には進まない。まるで進む必要が無いように。
自分とヘイムの関係は完璧すぎるためでもあるがこっちはあまりにも事務的に見えた。プロ同士の仕事のようにドライで。
自分がいるときはそんなことはないが二人の時は仕事のことしか話さないのでは? ヘイムからもそんな話を聞いてそこもまた心配にはなっていたがここで私用の話があると!
私用とはこの場合……とシオンの脳裏に奴の表情がやはり思い浮かんだ。あの表情が、間違えた間抜けな表情が、あんなことする奴は駄目だと。
ヘイムならジーナのことは悪く言ってくれるはず。良く言うはずもない。私とヘイムから反対されたら考え直すだろう。
冷静になるかもしれない。お願いだから頭を冷やして。そのヘイムの方向を見ると俯いて書類に目をやっていたそこはハイネと同じであり、どこか似ていた。
……似ている? とシオンはここでも違和感を覚えるも深くは考えずに扉に向かい退室をした。中の話はあとでヘイムに聞けばいいと。
その部屋に残った二人はしばらくの間は口を利かずに書類を見続けている。
先ほどまでと違い部屋には紙が擦れる音しか聞こえずさっきまでは誰も気にもしなかった鳥の囀りが窓から聞こえ部屋中に響く。
それは聞き覚えのない鳴き声であるのに二人ともそれに対して何も言わず口を開かずにいた。
そんなものは聞いていないというかのようにハイネが尋ねた。
「私を後方に戻されることの理由なのですが、よろしいでしょうか?」




