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ジーナから離れよ

 そもそもこの子があの男と変に仲良くなったのが事の発端であり、ヘイムと会いたくないとハイネとあの部屋でイチャイチャしたいが組み合わさったのが、この表彰式欠席問題の核心であるとシオンは間違いながら掴んでいた。


 なんであなたが喜んでいる立場なのか、とハイネに言いたくもなるがシオンは堪えた。

 ヘイムの面前でそのような指摘をすることは許されない、これは二人だけの秘密にしないといけない、それはハイネも心の底から信じ切っているだろうし。


 まさか龍身様の前で爛れた異性関係の暴露を、しかも知り合い同士のなどできるはずもない、そのこともきっとこの子は計算に入れているのだろうなと思いながら、シオンはそれでも罰を与えないといけないなと考えており、それを告げるタイミングを計っていた。


「ところでそれだけか?」


 突然黙っていたヘイムが口を開いて何かを催促しだした。


「なにがです?」

「この件についてはそれだけで終わりなのかと聞いておるのだ。御詫び状の内容やそれへの対応は、考えてはおらぬのか」


 このタイミングでこんないいものを振ってくれるなんて今日のヘイムは気が利きますね、と内心でほくそ笑みながらシオンはこれに応じた。


「その件ですがハイネはまずこちらの仕事に集中していただきます。しばらくは表彰式のための準備に時間を割くようにしてもらいますよ」


 到って普通の要請であるがシオンは先ほどのことがあるために言外に違う意味が含まれることとなる。それはジーナとの時間を削るということ。そうであることはシオンとハイネの間では分かり切っていたがハイネはそんなことを全く関知しないが如くに無反応のまま受け入れシオンはその胸に哀れの心が微風のようによぎった。


 この子はそういう子だ、と。


 そうであるからあれとの関係は断ち切れるはずだとシオンはある意味で楽観していた。まだよくわかってはいなかった。


「承りました。それではジーナとの手紙の作成は御詫び状の作成に変更いたします」

「ハイネが、か? その必要もあるまいに」


 この場ではじめて、ヘイムがハイネに話しかけたようにシオンには思えた。

 ハイネは固まった。

 だがその顔をヘイムの方には向けない。まるで背いているように。


「そなたのことだからな。ジーナの拙く至らない文面を見てあれこれと訂正させ整えるのであろうが、それは不要だ」


 ヘイムは身体を微かに向け語るもののハイネは未だ前を見続け、それどころか瞼さえ閉じていた。


「あれがそこまでお詫びをしたいのなら形式ばったことは不要だ。長々しい前口上や常套句など妾は望んではおらん。それはあやつの本心ではない。よって本心を一言でも二言もあればよい。あれが考え書き送ったものであるのならそれで十分だ。そうは思わぬか?」


 ハイネが「思います」という返事がすぐに返すとシオンは思うも、その声はすぐには返ってはこなかった。



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