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『討つものが、来た』

「高度な知能は持っていると思う。我々が狙われているのはこの荷物が原因かと。これには龍を狩り討つための武器が詰め込まれていますからね」


「そんな馬鹿な! やつらはこれの中身が何であるのか分かるのか?」


「そうでもなければ龍は山を登るものなど相手にはしない。腹が減ったから襲うといった獣らしさはこいつらにはない。目的がありそのために眷属を用いて戦うのが龍なのです。それでも今回の龍はかなり頭がキレると思えますね。我々の雰囲気と荷物からこれは自分たちにとっての危険なものを運んでいると認識しているところが」


 荷車を前にし円陣を組みながらアリバ商隊は逃げ出したくなる恐怖に耐えながらなんとか士気を維持していた。


「あと何分ぐらいですか!?」


「まだ構えてからちょっとしかたってないぞ」


 恐怖が広がる前にジュシはまた声をあげる。


「先手を取って構えた我々が圧倒的に有利なのはいまも変わらない。時間が経てば経つほどこちらが有利となり向うが劣勢となるんだ。やつらは攻めあぐね追い詰められている。我々が痺れを切らすことは絶対になく痺れを切らすのは向うだ。だから堪えてくれ」


 そう敵はこちらの臨戦態勢によって劣勢の淵に立たされている。武器は回収したいものの撤退をするかどうか。


 しないというのなら、一か八かの賭けに出るか……ジュシが呼吸をすると微風に乗ったのか違うものが鼻に入ってきた。臭いが変わった


「来るぞ!!」


 その絶叫と共に大型の蛇と思わせるものたちが一斉に円陣に飛び込んでくるも、動きを目で捉えていたジュシが剣を一度二度三度振るうと斬り裂かれた龍が血飛沫と共に宙を舞い地面に落下した。


 三匹を自分に向けて一斉に攻撃させるとは、やはり知恵が回る、今までにない龍だというのか? 背中で雄叫びと悲鳴が起こるも、まだ崩れてはいない


「やっやった! だがなんだよこの生き物!?こんなデカい蛇なんか見たことがねぇぞ!」


「それが龍の眷属だ! どうだみんな無事か!」


 ジュシは左右を見ると両方とも崩れてはいないし今の襲撃で腹が据わったようにも見えた。


「どうだジュシ! これでおしまいか!?」


 アリバの願い事じみた声と言葉をジュシは打ち消した。


「これで終わりとはとても思えないです。今のはいわば威力偵察でこちらの円陣の厚さを図ったのでしょう。どこが強くてどこが弱いのかを」


「馬鹿なそこまで知恵があるというのか!」


「あると見た方が良い。複数の眷属が同時にこっちにかかってきたぐらいには集合知があるということだ。だからアリバさんのカバーを頼む」


 足元に転がってたその龍の眷属たちの残骸を見おろしながらジュシは思う。このサイズは初期の初期段階に出て来る連中か。ならば本命の龍が出て来るのはまだ先になるということで……音が耳に入る、それは第二波? 何故か分かる、と感じながらジュシは叫んだ。


「構えろ! 次が来るぞ」


 予想通り集中させてきたとジュシは自分の方に大量の眷属が跳びかかってきたときに確信した。


 再び剣を振れば斬り伏せるも身動きはとれなくなる防戦一方であるも負ける気がしないと薙ぎ払うように眷属を斬っていくも、背中のほうから断末魔に似た声が聞こえてきた。


「助けてくれージューシ―!」


 振り返ると中サイズの眷属の手によってアリバが掴まり呑み込まれそうになっていた。


 だがまだ纏わりつこうとしている眷属によってジュシはその場から跳ぶことができない。このタイミングでそのサイズのがだと? そんな例は今までなかったぞ!


 混乱と焦りのなかでジュシはアアリバの悲鳴と助けようとするも蹴散らされる仲間の声で頭の中は満たされるも、自分のみを守ることで精一杯のなかで、思う。ここでもしあれがいたら、と。しかしそれと同時にこうも思う。


 自分があれであったら……ジュシは剣で以って大きな弧を描かせその勢いで以って跳ぶ。


 我が身を宙に放ちながらアルバのもとへ行く途中で、辺りが金色に包まれ、一切が停止する。


 その金色の輝きは人をも眷属をも龍をも動きを封じる光。


 光の中で小さく細い音が鳴り眷属の首がまず地に落ち、続いて血があたりに降り注ぐその景色のなかを一人の女が血を跳ね返しながら地に落ちて来る。


 その背に翼を有し天からここに降臨をするように。地上に足を着けると残っていた眷属らは一斉に撤退をしだした。


 ジュシはその逃げ去る音を耳に入れるものの意識はそちらには向かわずに、その女に向け、自分がいつ着地したのかも分からぬほどに大地に立ち、どちらが先に近づいたのか分からぬほどに意識が飛び、いつ自分の首にその剣が突き付けられたのかを気づかないほどにジュシは女の顔を見続けていた。

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