第五話 「ギルドショップとお買い物」
『天威竜星相剣』のネーミングから漂う格好良さよ。
まぁバランス考えて組んだのは『純相剣』なんですけどね。
遊戯王の話です。
「さあファランクス君! 楽しい楽しいショッピングの時間だ! どれでも好きな物を選ぶと良い!!」
「うわぁっ!? びっくりした、急にテンション高いのなんですか??」
昼食を食べ終えた二人はリューセンの案内で冒険者ギルド二階のショップフロアへとやって来ていた。
フロア内は証明で照らされ、広い店内に沢山の商品が並ぶ姿はリアルのデパートの様だった。
ちなみに、一階から二階への移動には『魔導エレベーター』と言うマジックアイテムを使用しているのだが、このマジックアイテムは五大陸にある五つの冒険者ギルド総本部にしか設置されていない激レア設備だったりする。
エレベーターに乗る際、ファランクスはその事をリューセンから教えられていた。
「いやなに、ゲーム内とは言え資金が潤沢だとね、誰かに何かを買ってあげるのが楽しくなっちゃうんだよ」
「いやあの、食事だけじゃなくここでも奢って貰うとなると申し訳なさで地面に減り込みそうなんですけど……」
「大丈夫! お金ならあるから!!」
「ダメ人間のセリフですよそれ!?」
ここに来て、タガが外れた様に燥ぎ出すリューセン。
その様子を見てファランクスは『自分に奢るというより、それを名目に散財したいだけなのでは?』と疑問に思った。
年上で頼もしい人ではあるが、リアルでのストレスをゲーム内で豪遊する事で発散しようとしているのかもしれない。
そう考えると、寧ろ大人しく奢られておくべきなのか? とも思うファランクスであった。
と、そこへ―――
「―――いらっしゃいませ、リューセン様。本日はご友人とお買い物ですか?」
「こんにちは、『セバス』さん。まぁそんなところですよ」
丁寧な挨拶と共に、燕尾服を纏う老紳士が歩み寄って来た。
リューセンとは知り合いらしく、リューセンもまた軽く挨拶を返している。
見るからに立場のある偉い人の登場に、ファランクスは再び白布で顔を隠したリューセンを見上げて訊ねた。
「リューセンさん、この人は?」
「ああ、この人はこの冒険者ギルドのショップフロアの店長を務めている『セバス・チャンドラ』さんだ。セバスさん、彼はファランクス君。今日冒険者登録を済ませたばかりの新人さんですよ」
「初めまして、ファランクス様。ご紹介に預かりましたセバス・チャンドラと申します。わたくしの事は気軽にセバスとお呼び下さい」
「うぇあっ、ど、どうも、ファランクスです。よろしくお願い、しますぅ……」
リューセンの紹介により互いに挨拶を交わすセバスとファランクス。
優雅な一礼と共に挨拶したセバスに対し、ファランクスの方は様呼びも含め雰囲気に飲まれてガチガチに緊張してしまい、挨拶の言葉も最後には尻すぼみとなってしまった。
が、そんなファランクス本人を横にリューセンは気分が乗ったのかガンガンとセバスに対し商談を進めていた。
「セバスさん、彼に装備一式と必需品や所望品も一揃え用意して貰えるかな?」
「承りました。購入代金の目安は如何程に?」
「私が払うからいくらかかっても構いませんよ」
「承知しました」
「ちょっ、勝手に進めないで!!」
と、流石にここでファランクスが止めに入った。
ベテランのリューセンからすれば新人の装備を整えるなんて大した出費じゃないのだろうが、流石にここまでおんぶにだっこでは情けなさ過ぎる。
「せめて俺も半分出しますから、全部払おうとしないで下さい!!」
「ええー、でもそれじゃあポーションなんかの消耗品を揃えて、武器か防具を一個買い替えて終わりじゃないか。それじゃあつまらないよ、序盤最強装備を金の力で揃えようぜ?」
「リューセン様の言う通りでございますよファランクス様? 折角の厚意に甘えないのも如何なものかと……いい、ここは敢えてこう言わせていただきましょう。『そんな装備で大丈夫でございますか?』と」
どうしてもファランクスの装備を揃えたいリューセンの援護射撃に、セバスからどこかで聞いた事のある様なセリフが飛んで来た。
「ちょっ、何でそのセリフセバスさんが知ってるんですか!?」
「ホッホッホ、以前にリューセン様から教えていただきました。このセリフを言うと、プレイヤーの皆様からの反応が良いのですよね」
「当然! 私からの注文は『一番良いのを頼みます』ですよ!!」
「そんなノリで決めて良いんですか、リューセンさん!?」
「『大丈夫だ、問題無い』」
「ここぞとばかりにネタに走るなぁーーー!!」
叫ぶファランクスと、そんな彼の姿を見てはっはっはと笑うリューセンとセバス。
良い歳の大人が若人を揶揄う姿がそこにはあった。
『セバス・チャンドラ』
名前に家名があることからも判る通り大王都の貴族家出身。
王国貴族は冒険者を蔑視する風潮が根強くあるのだが、そんな中単身冒険者ギルドへの就職を決意した過去を持つ人物。
勤続は四十年を超えており、中央大陸冒険者ギルド総本部の幹部の一人でもある。
侮蔑され後ろ指を指されようと構わない、若き日の彼にそう決意させるほどに当時の貴族社会は腐敗していた。
そんな彼にとって、汚職の無い冒険者ギルドは貴族社会よりもよほど貴いものに感じられた。
現在はプレイヤーの増加に伴いそれも改善され始めており、その事に彼は希望を抱いている。