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第四話 「昼食とモテ男」

二部六章後篇クリアしたので更新。

妖精騎士ランスロットもパーシヴァルも引けたので、今ならすべてを許せそうです!











ただし妖精国、テメーは駄目だ。

「モグモグ、ゴックン。このカツサンド絶品ですね、リューセンさん! 特にこの豚肉が!!」

「ああ、それは『ハイグレード・デリシャスピッグ』のお肉だね。元々ゲーム内でも入手し難いかなりグレードの高い食材だったんだけど、『スペシャルマーケット』さんって言う生産職のプレイヤーが繁殖方法を見つけてね。今では大規模農場で大量飼育されてるから、ちょっと高いぐらいの値段で食べられるんだよ。今ならイベント期間中で半額になってるからお得だね」

「へぇ、農場経営ですか」

「生産職で成功したプレイヤーは沢山居るけど、スペマさんを始めトップオブトップの人たちはガチで度肝を抜かれるほど儲けてるよ」

「そんなにですか?」

「それこそスペマが良い例だけど、最初はただの農場経営だったのが今じゃ発展し過ぎて都市経営……いや、あの規模はもう既に小国って良いレベルだね」

「そんなに……!?」



 冒険者登録を終えたリューセンとファランクスの二人は現在、ギルド内のフードコートエリアにて昼食を取りながら雑談を交わしていた。

 リューセンは本日のお勧めであった海鮮パスタを既に完食して食後の紅茶を楽しんでおり、ファランクスは一番人気メニューのカツサンドをモリモリ食べている。


 ファランクスの冒険者登録自体は特筆する必要も無いほどにあっさり終わった。

 順番の回って来たファランクスは受付嬢に案内されるまま差し出された液晶タブレットの様なマジックアイテム(正式名称は『水晶(クリスタル)タブレット』と言うらしい)に表示された手形のマークに自身の右手を合わせて一秒ほどスキャン、それだけで登録は終わってしまったのだ。

 もっと色々、名前だのジョブだの冒険者としての志望理由や夢などを聞かれるかと思っていたファランクスとしては肩透かしを食らった気分だった。

 だが、それ以上に気になったのは―――



「リューセンさん! 食後のデザートを持って来たんですけどいかがですか! って……持ってくるのが遅かったですね、ごめんなさい」

「謝る事なんて無いよ、キャシーちゃん。折角君が私の為に持って来てくれたんだ、喜んでいただくとも」

「リューセンさん……!」



 ファランクスが大皿に乗っていたカツサンドの山の最後の一つに手を伸ばそうとしたところで、桃色の髪をツインテールにした可愛らしいウエイトレスの少女が矢鱈気合の入ったデコレーションのホールケーキをリューセンに持って来た。

 既に食後のお茶を飲んでいたリューセンの姿を見て一時はショボンとした顔になっていたが、リューセンが笑顔でケーキを受け取った事で頬を赤らめ感激した表情となっている。



「ちょっとキャシー! アンタまた勝手に持ち場を離れてリューセンさんにご迷惑をかけたでしょ! 食後にこんなバカでかいケーキなんて持って来て」

「イ、イヴ()ぇ!? め、迷惑なんて掛けて無いよ! リューセンさんだって喜んでくれてるし!」

「気を使って貰ってるだけでしょ! すみません、リューセンさん。毎度毎度うちのバカ妹がご迷惑をお掛けして」

「迷惑だなんて思って無いさイヴちゃん。寧ろ、いつも賑やかに歓迎してくれて嬉しいくらいだよ」

「ほら! リューセンさんだってこう言ってるよ、イヴ姉ぇ!」

「調子に乗らない!」


 スパーン!


「痛ったーい!」

「ハハハ、君達はいつ来ても賑やかだね」



 増えた。

 後頭部を抑えて涙目となっている桃色髪の少女、キャシーの頭を引っ叩いたのは新たに現れた金髪ストレートヘアーのウエイトレス、イヴだった。

 血の繋がった姉妹なのか、はたまた姉と呼ぶほど仲が良いのかは定かでは無いが……傍から見ていてファランクスが感じたのは二人揃ってリューセンに好意を抱いているのが丸判りだという事だった。

 そしてそんな二人を、リューセンはニコニコと笑顔で眺めている。


 笑顔、そう笑顔だ。

 ずっと白布で顔を隠していたリューセンだったが、食事を摂る為に今は素顔を晒しているのだ。

 被っていた白布は現在ストールの様に肩に掛けられ、本人はいつの間にか切り分けられていたケーキを小皿に取り分け食べている。

 素顔のリューセンはどことなく気品を感じさせる黒い長髪の青年だった。

 アイドルの様に極端にイケメンと言う訳では無いが、落ち着いた雰囲気と気品ある振る舞いの為ファランクスは「格好良くてモテそうな人だな」と素直に感じていた。

 普段からテーブルマナーに慣れているのか仕草の一つ一つが洗練されており、ただ食事を摂っているだけでもとても絵になると感じさせる。

 他の客もそう感じているのか、特に女性陣からの視線が多いとファランクス周囲の様子を見て思った。



(受付の人もリューセンさんに矢鱈愛想良かったもんなぁ)



 思い出すのは、冒険者登録が終わった後親し気にリューセンに話しかけていた受付嬢の姿だ。

 登録自体はタブレットにタッチするだけで終わる為ファランクスたちの前のプレイヤーはどんどんはけて行ったのだが、受付嬢はファランクスの登録が終わった後凡そ十分ほどリューセンとの歓談を楽しんでいた。

 きっかけが無ければそのまま更に話し続けていたかもしれないが、そろそろ後ろに並ぶプレイヤーたちの視線も厳しくなって来たという頃にファランクスの腹の虫が鳴り、それを聞いたリューセンが「ああ、お腹空いてたもんね。待たせちゃってごめんね、そろそろご飯食べに行こうか」と言った事で離脱する事が出来たのだ。

 「また今度ゆっくり話そうね」と言うリューセンには笑顔で手を振る一方、水を差した自分には差すような冷たい視線を向ける受付嬢に対し「女って怖え」とファランクスは思った。



「ごめんね、彼女も普段は仕事を疎かにしたりしない人なんだよ。ただここ最近は新規プレイヤーの登録を毎日数百人単位でやってるから、息抜きの一つもしたくなるんだ。許してあげて欲しい」



 フードコートに向かう途中、リューセンはそう言ってファランクスに受付嬢の行動を謝っていた。

 その時は知り合いの代わりに謝るなんて意外と生真面目な人だなぁ、程度に思っていたのだが。



(違う! この人行動がイケメンなだけだ!!)



 顔が良くて気前が良くて品が合って優しくて愛想が良くて気遣いも出来る。

 なんかもうモテる要素しかない人だなぁと思いながらファランクスはカツサンド最後の一欠けらを頬張り飲み込んだ。


 ファランクスがカツサンドを食べ終えると、いつの間にかウエイトレス二人はその場から居なくなっていた。

 周囲に目を向けると、少し離れた場所で忙しなく動き回っている様子が見える。

 どうやら二人共仕事に戻ったようだ。


 このギルド内だけでも、リューセンさんの事を好きな女の人ってどれくらい居るのかなぁ? と考えていると、件のリューセンはいつの間にかホールケーキを平らげていた。



「ふぅ、流石にちょっと苦しいね。さて、ファランクス君の方も食べ終わったみたいだし、もう少ししたら次は買い物に行こうか」

「はあ」

「?」



 気の無い返事のファランクスに頭に疑問符を浮かべて首を傾げるリューセン。

 そんな姿もイケメンだなぁと思いつつ、ファランクスは何となく訊ねてみた。



「何というか、リューセンさんってモテますね?」

「そう思うかい?」

「はい、すごく」

「だったら嬉しいね。格好良いとか魅力的とか、そう思われる自分で在りたいからね」

「格好良いと思われる自分……ですか」



 謙遜するでも自慢するでも無く嬉しいと、そう在りたいと返すリューセン。

 思いもよらぬその返答にファランクスは、



(そう在りたい、か。 ―――なんか良いな、そういう考え方)



 ほんの少し、憧れを感じるのだった。

ちなみに受付嬢の名前は『エル』です。

ウエイトレス二人含めて名前の元ネタは判る人には判る。

ヒントは『サベージ・ストライク』。

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